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第1回サピックスオープン算数Bタイプ全3問の出題の狙いを解説

第1回志望校判定サピックスオープンの成績が発表になりましたね。
今回は算数Bタイプの全3問について、出題の狙いと、今後どのような力を伸ばしていけば良いかについて分析し、解説していきます。

まずこのサピックスオープンの算数Bですが、例年第1回は平均点が非常に低くなります。
今年の平均点も150点満点中で47点と低調でした。

今の時期の受験生にとっては難しい問題が出題されているということです。
さすがサピックスオープンです。

今回は、大問1~大問3のすべてについて、出題の狙いを算田が勝手に分析しこれから入試の日までに伸ばしていくべき力を解説していきます。

同時にご家庭で対策する際に参考としていただきたい視点についてもアドバイスしていきますので、最後まで読んでいただければと思います。

結論を先に書いておくと、大問1・2タイプの問題への対応・対策は今すぐ始めなくても大丈夫ですが、大問3タイプの問題への対策は今すぐ始めるべきです。
(時間のない読者の方は問題3の項目だけでも読んでください)

サピックスオープン算数Bタイプ大問1 会話文形式の場合の数

近年のトレンドでもある会話文形式の問題を入れてきました。
この形式の出題は今後の入試でも増加することが予想されます。

問題文中に「2020年に東京オリンピックが開催される」と書いてあるので、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行以前に作られた問題ですね。

こういった会話文形式の文章題を解くカギは、他人が設定した論理に乗っかることができるかどうかです。

会話文問題は、複雑な手順を要する問題についてどの順番で考えていけばよいのかという道筋を示してくれています。
そのため「何をやらせようとしているのか」を理解する必要があります。

自分でイチから論理を組み立てるのではなく、作問者が設定した論理のレールに乗ることができるかどうかが分かれ道です。

この手の問題は、何が聞かれているのかさえ分かってしまえば、算数の技術的な部分はそれほど難しくなかったりします。
特に前半の小問については、文の意味さえ理解できれば書き出すだけで答えを出せる問題や、計算量が少なく解ける問題が出題されており、得点することは決して難しくはありません。

ご家庭で対策する場合

次の事をお子様に伝えましょう。
「いつもよりも問題文の読み取りにかける時間を増やしても良い」
平均点越えくらいまでであれば、文章の読み取りにかける時間を増やすように意識するだけで劇的に改善します。

テスト中の生徒はみな焦っています。
文章はなるべく早く読んで計算に時間を残さなくてはと、かきたてられるかのように飛ばし読みをしてしまいます

文の読み取りこそが勝敗の分かれ道であり、そこにエネルギーを投下すべきだという意識を持つだけで、改善がみられると思います。

サピックスオープン算数Bタイプ大問2 題意を読み取れるかどうか

この大問2は、見慣れない状況設定となっています。
一見するとニュートン算のようなのですが、注水管が1分間に入れる水の量が「〇L以上〇L以下」のように、幅がある形で表されます。

サピックスがこの問題を通じて受験生に求めていることは、立体図形やニュートン算の知識ではありません。
ですので、お子様がこの問題を間違えてしまったからと言って、立体図形やニュートン算の復習をさせたとしても、この問題が解けるようにはなりません。

ポイントはもっと別のところにあります。
そのポイントが「題意の読み取り」です。

(3)の前に書かれている6行のリード文の最後の方に「容器の中の水量が変化しない組み合わせが1つだけあることが分かりました」という一文があります。

ここの文章の「意味」を考えることができたかどうか。
こういった見慣れない・不可解な表現に出会った際に、考える癖がついているかどうか。
サピックスがこの問題を通じて受験生に求めているのは、そういった部分だと思います。

なぜ「水量が変化しない組み合わせが1つだけ」という条件が加わっただけで、答えが一つに定まるのか。
適当な数値を入れてみてはダメなのかな?
とりあえずよさそうな数値を入れてみよう。……あ、確かにダメだ!
他の数値も入れてみよう。やっぱりだめだ。ちょっと工夫しないとうまくいかないぞ。
ということは……

このように考えられた子が正解にたどり着いています。
問題1の会話文タイプの問題が「他人の論理に乗っかる能力」を試しているのだとしたら、問題2は「試行錯誤しながら自分で論理を探し出す能力」を試しています。

この手の思考法は、麻布中学を筆頭とした「Bタイプ」の学校で共通して求められる思考法です。

この能力を高めるには、結果論的な解説の指導ではなく、答えにたどり着くまでの試行錯誤や考え方の手順を指導する必要があります。

指導者の立ち場としては、最終的な正解を示すだけでは不十分です。
その正解に至るまでに、どのようなトライ&エラーを繰り返すのか。どういった手順で考えているのか。
解答解説の冊子には表れない部分の指導に力をかけるべきだと思います。

さて、今回のサピックスオープンでこの大問2を間違えてしまった子に対して、今からこの手の問題の対策を始めるべきなのでしょうか?
個人的には、5月6月からこの部分の指導を始めるのは少々早すぎる気がします。

今はまだ、典型問題の解法知識を増やすことに時間を割くべきだと思います。
たとえサピックス偏差値で65~69の子であっても、今はまだ典型問題の抜け漏れをなくすことを頑張る時期です。
「今年の受験は夏にやることを前倒しすべき」とは言いますが、それを勘案しても、夏の後半又は秋頃からの着手でいいと思います。

ご家庭で対策する場合

この手の問題への対策は指導者によって差が付く所ですので、理想を言えば信頼できる先生に指導してもらうことがベストです。

家庭学習でこうした問題への対策を行うとすると、保護者の方が適切な問題を選んでお子様に解かせて練習させる必要があります。

有効な問題を見分ける際の目安としては「見慣れない状況設定」かつ「文章の長い」問題を選んでください。

また、普段通っている塾のテキスト以外から問題を探してくることも有効です。
塾のテキストの問題はどこかで一度類題を解いていることがあるので、見慣れてしまって、新奇性に乏しい恐れがあります。

もちろん完璧ではありませんが、上に挙げた2つの基準で問題を選べば、思考力を必要とする問題となっている可能性は高くなります。
思考力を重視する学校を志望されているご家庭は参考になさってください。

※最後に注意点
①算数の専門家である家庭教師が問題を選べば、より正確に必要な要素の含まれた問題を選びます。あくまでご家庭で問題を選ぶ際の簡易版の判断基準としてお使いください
②5月6月は、ほとんどの子はまだ基本問題の習得に時間を使うべきで、こういった思考力タイプの問題のトレーニングに時間をたくさん使うのはお勧めできません。秋以降の学習の際に参考にしてください。

サピックスオープン算数Bタイプ大問3 丁寧に書き出す

大問3は約数・倍数に関する出題でした。
例によって例のごとく、問題が長文です。

問題を読み進めていくと分かるのは、ある番号のボタンを押すと、その約数と倍数に対応する番号のパネルがひっくり返る。というルールです。

まずは結論から書きます。
約数と倍数をそれぞれ書き出したを作成したかどうかが〇×の分かれ道です。

このような表です。

押した番号光が変わる番号
22,4,6,8,10
33,6,9
42,4,8
55,10
62,3,6
77
82,4,8
93,9
102,5,10

この表がどんな意味かという詳細はここでは触れないでおきましょう。
ただ感覚として「簡単そうな表だな」と思っていただければ大丈夫です。

そうなんです。この表はとても「簡単」なんです。
たとえこの問題をテストで間違えてしまった子だとしても「こういう表を書いてみなよ」と促せばスラスラ書けるはずです。

それでも、今回点数が低かった子の多くはこのような表を書いてはいないでしょう。
もしもこの表を書くことができたならば、(1)と(2)を間違えることはなくなります。(3)も少し時間をとって考えれば正解を出せるかもしれません。

繰り返しになりますが、間違えた子はきっとこのように書き出して表でまとめるということをしていません。
書けないとか、書き方を知らなかったからではありません。
書こうという発想がないからです。

先ほどの大問2の内容ともかぶりますが、この問題の(1)や(2)を間違えてしまった子が練習すべきなのは、数の性質の問題をたくさん解くことではありません。

条件の複雑な問題では、表にして整理すると考えやすい。ということを認識して使えるようにする。というこの一点です。
言葉で言うのは簡単ですが、これが自然に出来るようになるまではなかなか大変です。

自然と「あぁ、これは表を書いた方がよさそうだ!」と心から思えるようになるまで練習しないといけません。
先生に言われたから書くのではダメなんです。自発的に「表を書きたい!書くぞ!うおおおお!!」という気持ちを呼び起こさないといけません。

対策

問題1と問題2については、今すぐ対策をしなくても良いと書きましたが、この問題3の対策については今すぐ始めて良いです。

つまり「複雑な条件は表に書いて整理する」という行為を自分のものとする練習は、今すぐ始めるべきです。

さてどのようにして習得したら良いのでしょうか。練習あるのみです。

ではどのような問題で練習すれば良いのかというと「表を書いて整理しないことには複雑すぎて混乱してしまう問題」です。

表を書くという行為は基本的に面倒です。やりたくありません。
書かずに頭の中だけで解けるのならばその方が楽です。これは否定できません。

にもかかわらず表を書こうと思わせるためには「表を書く面倒くささ」を上回るレベルで面倒な問題を出すしかありません。

「表を書くのは面倒だけど、書かないで頭の中で考えるのはもっと面倒だ。しょうがない表を書くしかないな……」
という状況に受験生を追い込みます(!)

何度も何度も表を書かざるを得ない状況に追い込んで、いつしか自然な動作として、自発的に表を書こうと思うようになるまでトレーニングします。

この練習の際に指導者として一番難しいのは、生徒に解かせる問題選定です。
簡単すぎたら頭の中だけで解けてしまうし、難しすぎたら表を書いたところで難しくて解けない。
頭の中では解けないけれども、表を書けば何とか解ける。という絶妙な難易度の問題を選んできて解かせます。

これは結構難しいです!


ご家庭で対策する場合

上でも書きましたが、適切な問題を選ぶのが難しいポイントです。
本当は専門家の先生にお願いするのが良いのですが、保護者の方が問題を選ぶ際の選定基準としては

①解説に表が載っている問題を選ぶ (解説に表があるということは、解く過程で表による整理が求められる問題の可能性が高い)

②問題の文章と解説の文章の長さで難易度を判断する (もちろん例外はありますし必ずしも正確ではありませんが、一般に問題文や解説の文が長いほど問題の難しさは上がる傾向にあります。お子様のレベルに合わせた難易度の問題を選ぶ目安にしてください。)

 

まとめ


ここまで問題の出題意図の分析と、ご家庭で対策する際の目安などを書いてきました。
ご家庭での対策・アドバイスについては、ご家庭で判断する際に少しでも役に立てばとの思いで、使いやすいよう単純化して書いています。

ベストではありませんが、次善の策になれば良いと思っています。

プロ家庭教師がやるような高度な指導ではなくても、ご家庭で出来る対策はたくさんあります。
思考力問題は多くの受験生が対策に苦慮している分野ですので、ここで差をつけられると強いです。
頑張りましょう。


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