中学受験には様々な単元があります。
植木算、平面図形、規則性、食塩水など……
これらは名前を聞いただけで、保護者の方も大体何を勉強しているのか大体想像できると思います。
その中にあって、ネーミングだけでは何をやっているのか想像しづらい単元がいくつかあります。
そのうちの一つが「和と差に関する問題」です。塾によって微妙に名前が変わることもありますが、大体このような名前の単元があるかと思います。
この「和と差に関する問題」とはどんなものなのか、問題作成者の思考という裏話も交えながら解説してきます。
和と差に関する問題とは何なのか?
初めに断っておきますと、「和と差に関する問題」というくくりには雑多な問題が含まれているので、その中でもメインとなる問題に絞って、問題の構造について解説していきます。
さて突然ですが、次のような文章がありました。
問題文の冒頭
AとBの所持金の比は2:5です。さて……
この文章に続けて問題を作る際に、作り方は大きく分けて4パターンあります。
(1)Aの所持金は200円です。Bはいくらですか? →200×5/2=500円
(2)Bの所持金は500円です。Aはいくらですか? →500円×2/5=200円
(3)AとBの所持金の合計は700円です。Aはいくらですか? →700×2/(2+5)=200円
(4)BはAより300円多く持っています。Aはいくらですか? →300×2/(5-2)=200円
最も簡単にすると、問題の作り方としては上の4パターンがあります。
そして、(1)と(2)は簡単すぎてほとんど出題されません。
つまり、AとBの比を提示して、その片方の数値を明らかにしたうえでもう一方を求めさせる問題は簡単すぎて問題として成立しないのです。
そうすると、問題としての「面白さ」を出すためには、下の2パターン(3)か(4)にしないといけなくなります。
これが「和と差に関する問題」です。
(3)が和に注目した問題。(4)が差に注目した問題です。
もちろん実際の問題はもっと複雑ですが、問題を作る際は、このどちらかをコアにしてそこから肉付けしていって難問にします。
つまり、「BとAの差は300円です。」の情報を分かりにくく隠したり、「BとAの差は」のところをストレートに言わずに比を使ったり、消去算的な処理を必要にしたりして、遠回しに情報を提示してきます。
なんにせよ、和と差に関する問題を突き詰めていくと多くは、どこかで(3)か(4)のパターンを利用しています。
受験生は何を意識すればいいのか
結論から書きますと
「比や①が出てきて何をすればいいのか迷ったら、二つのモノの和か差を使って何かできないか考えてみる」
という方針です。
この「和か差で何かできないか考える」というザックリした方針が有効だと思っています。
個々の問題ごとに注目すべきポイントは当然あり、それを憶えることももちろん大切です。
ただ一方で、全体的な、大体の方針意識を持っておくことも同時に重要です。
算田が指導している生徒には「困ったら和か差を使ってなんか出来ないか考えてみよう」
というような言い方をしています。
「困ったら」というのは、つまり次に何をしたら良いのか分からなくなっている状態です。
そして上で書きました問題製作者の心理からひも解くと、情報を隠す時には和か差を利用する形(パターンの3と4)で問題を作るのが常套手段でした。
そのため、受験生が次の一手に困ったときには、和とか差かな? という方針で考えてみる事は大切です。
算田の個別指導では、こうした「全体の方針」を自分で見つけられることを重視しています。
というのも、大手の集団塾に通っているお子様ですと、個々の問題の解法・パターンは授業で習ってきています。
一方で全体的な方針の立て方はあまり習っていないことが多いので、そこを補完する必要のあるお子様が多くいらっしゃいます。
算数の実力が上位の生徒には、問題の構造のようなメタな部分も少し伝えたりしています。
算数の問題は天から降ってくる訳ではなく人が作っていますので、必ずクセやパターンがあります。
実際に受験生に指導する際には「なんか困ったときには和か差!」のように丸めて伝えていますが、その裏で家庭教師はこんなことを考えているんですよ!
という紹介を記事にしてみました。
参考になれば幸いです!