子供に図を書かせることとはマーケティングに似ています。
どんなに良い商品でも、伝え方が悪ければ売れません。
「いいものなら売れるなどというナイーヴな考えは捨てろ」
とは漫画『ラーメン発見伝』の名台詞ですが、中学受験算数でも同じことが言えます。
つまり
「良い解き方なら受け入れてくれるなどというナイーヴな考えは捨てろ」です。
作図が良い解き方であることは論を待ちません。
全指導者・全保護者が「図を書きなさい」と口を酸っぱくして言っていることでしょう。
しかし生徒は図を書きたがりません。
なぜか?伝え方が悪いからです。
つまり商品は良いのに、マーケティングが失敗しているので消費者に良さが伝わっていない状態です。
目次
知らないものは忌避される
電子レンジが出始めの頃、言われていたことがあります。
「あんなものは不要だ」
「蒸し器で十分」
です。
今となっては笑い種ですが、当時は本気で言われていたようです。
便利の極みとも思える電子レンジでさえ、最初は受け入れられなかったのです。
ましてや「図を書けば問題が解けるようになる」という発想なんて、受け入れさせるのには相応の労力がかかるのは当然でしょう。
電子レンジって一回使えば便利さが分かりますよね。
なくてはならない家電の一つです。
作図も同じです。
まずは使ってもらうことが必要です。
まず一回使って、良さを体感してもらうにはどうしたらいいのでしょうか?
最初はエンタメでコーティングして良い。本質?そんなものは犬に食わせておけ
新商品を、まず一回使ってもらうにはどうしたらいいでしょうか?
無料で配る?
ダメダメですね。信頼の無い商品は、例え無料でも使われません。
例えば電子レンジを普及させたいなら
「コンビニで買った商品を電子レンジで温めたら、待ってる間ダンサーが踊ってくれる」とかで良いんです。
ダンス見たさに電子レンジを使ってみて、便利だと気づいてもらえれば普及が進むでしょう。
作図も一緒です。
例えば「図に、何か意味のある数字や文字を書き込んだら、どんなに小さなことでも1点加点する」等の遊びをするんです。
・A町とB町の間に「600m」と書き込めたら、それだけで1点
・「兄:4m/秒」と書き込めたら1点
・図の両端に「家」と「学校」と書き込んだら2点
などです。
ここで注目なのは、点数を集めたら何かがもらえる訳ではないと言う事です。
特に意味のない点数です。
点を獲得するごとに、私が「いえーい1点ゲットー」と言いながら黒板に正の字で記録し、講師である私が楽しげに踊るだけです。
(ウソです。踊るかどうかは生徒の性格によって変えます笑)
真面目な話をすると、何が評価されることなのか? の評価関数を変えているんです。
つまり
「完成形のきれいな図を書くこと」や「問題の正解を出すこと」が評価の対象だと思っている子に対して
そうではなく「些細な事でも数字を書き込めたらgood」で「人や町の名前を書いただけでもgood」であると伝えるだけで
子どもは元気よく書いてくれます。
(たまに書いてくれない子もいますが、その場合はまた違う方法を試します)
まずはエンタメで良いんです。
ナゾの「点数」欲しさに数字や文字を書き込んでくれたら大成功です。
人はコストを先に払うことを嫌う
「100時間くらい勉強すると、その後でめっちゃ楽しくなるゲーム」があったとします。
やりますか?
きっとやりませんよね。
(だから、私の大好きな囲碁は衰退しているんです。楽しくなるために払うコストが大きすぎます。すみません、話が逸れました)
人は今すぐ楽しくなりたいんです。
現代っ子は報酬が即時じゃないと受け入れられません。
作図は、今この瞬間が面倒で、報酬は数分後に得られる「解けた」という気持よさです。
これはダメです。現代的ではありません。
どうしたらいいか?
今この瞬間の「面倒」を消してやればいいんです。
本質的でなかろうとなんであろうと、とにかく一回、作図を経験させます。
そして、作図したら簡単にスルっと解けたという成功体験を積ませます。
これを何回か繰り返してあげれば、段々と作図を受け入れる心の準備ができてきます。
良い解法ならば受け入れられるなどというナイーヴな考えは捨てましょう。
良い解法だからこそ、手段を尽くして受け入れさせる努力をします。講師はつらいよ。
成功体験の演出
成功体験の演出で重要なのは、問題の選定です。
図を書かなければ解けない。
でも図を書けばスルっと解ける。
という絶妙なラインの問題を選んばなければなりません。
簡単すぎると「図なんて書かなくても解けるじゃーん」という偽りの成功体験を植え付けてしまいますし
難しすぎると「図を書いたって解けないじゃん」という失敗体験になってしまいます。
その子の今の実力を正確に把握し、絶妙なラインを狙った問題を選ぶ。
これが個別指導の醍醐味の一つだなぁとも思います。
まとめ:マーケティングのススメ
ここまで書いてきたのは「マーケティング」
当然ながら商品がいい物であるのは大前提です。
つまり
①良い解法であること。分かりやすい図の書き方が指導されていること
↓
②それを生徒がいい物だと感じてくれること
の順番です。
①は出来る先生が多いので、まぁ大丈夫でしょう。
(出来ない先生もいますが…)
問題は②です。
技術論としていい解法であることと、精神論としてそれが受け入れられることは別である。
ここまで理解して指導してくれる先生を見つけたら
絶対に逃さないようにしましょう。その先生は逸材です。