小学生への指導でよく言われるのは「式を書きなさい!」です。
面倒なことが嫌いで、式を書かずに出来るだけ頭の中だけでやろうとしてしまう子が多いですよね。
保護者や講師からは、式を書いて整理するように口酸っぱく言われているご家庭も多いのではないでしょうか?
私も基本的には、最低限の式は書くように指導することが多いです。
一方で、少数事例ではありますが「式を書かないようにしよう!」と指導することもあります。
かなり珍しい事例です。
式を書かないように指導する生徒の割合は、担当生徒の1割~2割くらいです。
式を書かないように指導するとはどういうことなのか?
どのような場合に式を書かない指導を行うのか?
について解説していきます。
読者の皆様のお子様が当てはまる確率は高くはありませんが、こんなケースもあるという事で楽しんで読んでいただけたらと思います。
式を書きすぎるあまり論理を見失っている子が居る
どのような生徒に、式を書かないよう指導するのか? に対する簡潔な答えがこちらです。
式を書きすぎるあまり、論理を見失っている子 です。
具体例を挙げて説明します。
算数や数学と言うのは、基本的にやりたいことがあり、そのための手段として式を書きます。
例えば「1~10までの整数の和を求めたい」と思った際に
という意志がまず先にあります。
次に
つまり順序としては
問題→やりたいこと(意志)→式を書く
という順番です。
しかし、式を書こうという意識が強すぎる子は、意志のフェーズを飛ばしてしまう様子が見受けられます。
つまり
問題→式を書く
となっていることがあります。
何をやりたいかと言う意志をすっ飛ばし、いきなり式を書こうとしています。
具体例としては
「1から10までの整数の和を求めなさい」という問題があった際に
少し誇張していますが、こんな感じになっています。
この子の場合、「1+2+3+4+5+6+7+8+9+10をしたい!」という意志が抜け落ちてしまっています。
式を書かなきゃ!と思うあまり、何をしたいかと言う目的意識が希薄になってしまっているのです。
「何を計算したいのか、ちゃんと考えなさい!」という指導は無意味
さて、このような子に対して指導者が求めたいのは、何を計算したいのか、ちゃんと考えて解きなさい! という事です。
これに尽きます。これが出来れば苦労しません。
そして、「ちゃんと考えなさい!」と言われてちゃんと考えられる子は一人もいません。
口でやれと言われただけで出来るのならば、家庭教師なんて不要なわけです。
「ちゃんと考えなさい!」と言ったってうまくいくわけがない。
そんな抽象的な指示で、他人の思考パターンを変えさせることなんてできる訳がありません。
全ての指導法の出発点はここです。
では、小学生の思考パターンを変えるにはどのようにしたらいいのでしょうか。
思考パターンを変えるには、具体的な行動で自然に誘導するしかない
人の思考パターンを変えさせるための指導方法は、基本的に一つしかないと思っています。
具体的行動で指示を出し、自然と変化するように誘導する。これしかないと思っています。
滔々と言って聞かせても無理です。
つまり、何かとある行動をすることで、自然と目指す思考パターンに近づいていくように働きかける
という事です。
その方法が、冒頭で紹介した「式を書かないようにしよう!」という指導です。
指導者の想いとしては「何をやりたいのかをしっかり考えて欲しい」という事です。
しかしそれをそのまま子供に伝えても、何も変わりません。
指示が抽象的過ぎるからです。
何か具体的な行動に置き換えて指導する必要があります。
指導者の想定する「何をやりたいのかしっかり考える」に最も近い状態となる、具体的な行動は何だろうか。
それは生徒によって異なります。
「図を書こう」であることもあれば、「問題文を音読してみよう」であることもありますし、また「式を書こう」であることもあります。
問題を読んだ際に「式を書こう!」という意識が強すぎる子へのショック療法としては、式を書かないように指導します。
すると、自然と「何をやろうか?」という目的・意志の方に意識が向き始めます。
もちろん全く式を書いてはいけないわけではなく、ある程度方針が立ったなら、そこからは式を書いて考えてOKです。
やって欲しいことや理想的な状態をただ伝えるのではなく、それを実現するための具体的な行動は何だろうか?
そんな変換が、小学生への指導では必要になると思います。
何かの参考になれば幸いです。