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文章題苦手

受験勉強未修、勉強大嫌いな状態からの逆転第一志望合格【2022年度麹町女子中学合格指導記】

2021年度に指導した生徒の指導記です。

5年生の中頃から1年半ほど指導した生徒です。
第一志望校だった麹町女子中学に合格を果たしました。
2月1日は不合格でしたが、2月2日で合格を手にしました。

麹町女子中学、皆様ご存じでしょうか。
もしかすると、併願校として検討している方が多いかもしれません。

しかしきちんと入試をして選抜をしている学校です。
受験勉強をしていない生徒がフラッと受けに行って受かる訳ではありません。

今回取り上げる生徒はとても良い子でしたが、勉強はとてもとてもとても苦手な生徒でした。
大変な受験勉強になりました。その記録を兼ねて、指導記を記事にしておきます。

ちなみに、こちらの記事を書くきっかけになった生徒です。

参考4年・5年で文章題が物凄く苦手な子の原因はこれかも?「ずつ」

4年生、5年生のお子様で「文章題が物凄く苦手」という場合の原因としてよくある一例をご紹介します。 掛け算・割り算の文章題で次のようなものがあります。問題:算田先生は3人の生徒に1人12個ずつリンゴを配 ...

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この記事はこんな方に是非読んでいただきたいです
・中学受験に参入しようか迷っている
・公立小学校の勉強でも苦労している
・公立の中学に進学した場合の学習サポートに不安がある
・面倒見のいい私立中学に進学したい

指導開始時はどんな状態だったか

指導を開始したのは5年生の秋ごろです。
その時は地元の塾には通っていましたが、受験算数の知識・技術は何一つ身に付いていない状態でした。
公立小学校の勉強でも苦戦している所があるようでした。

予習シリーズ4年上第一回の最初の問題からつまずいている状態です。(掛け算と割り算の文章題の単元です)

状態としては
・受験算数の知識はゼロ
・計算力は非常に低い
・家庭学習の習慣は付いていない
・本人に学習意欲はない。(これまでの出来ない経験で意欲がなくなってしまっている)

です。語弊をおそれずに言えば、考え得る最も厳しい条件がそろっていました。

何を指導したか

全体の流れとしては

指導初期:「勉強をしたら出来るようになる」という感覚をつかんでもらう。
指導中期:①和と差の問題の解き方を身に付ける。②速さの感覚③割合の感覚
指導後期:比の感覚を理解する
追い込み:頻出分野を繰り返し練習

こんな感じです。
中学受験の全範囲を網羅するのは不可能でした。
入試突破に必要なところに絞って対策。しかし根本理解に必要な単元には惜しまず時間を投入する。

詳しく説明していきます。

指導最初期 5年秋~冬 まずは「やったら出来るようになる」を

指導を開始した段階では、勉強に対して心を閉ざしているようでした。
「どうせ勉強したってできない」と思っていたのかもしれません。

まず最初に狙ったのは「勉強したら出来るようになる」という感覚を味わってもらうことです。
初めは「かけ算の文章題」。予習シリーズ4年上の第一回です。

ここだけで、週1回の授業で3週間くらいかけたかもしれません。
先を急ぎたい気持ちもありましたがグッとこらえました。
勉強した→理解して解けるようになった の感覚を味わってもらうことが、この先長く続く受験勉強を戦っていく上で絶対に必要だからです。

目先のカリキュラムの進度よりも、まずは一単元で「分かった!」を味わうことの方が長期的に見て意味があると信じています

それも、解き方を暗記して出来たのではなく、意味を理解して解けたのでなくてはいけません
「配る問題は二つの数字をかけ算したら答えが出る」のような妙なパターン暗記では意味がありません。
講師(算田)が解き方を教えたから解けたのではなく、自力で解けたと感じてもらう必要があります。

下のリンクの「ずつ」についての指導もこの時期です。
「3人の生徒に12個ずつリンゴを配りました。全部で何個ありますか?」という問題で、私の顔色を見ながら「4?」と答えてしまう状態からどのように指導したのか。
おそらく、これまでこの子が出会った算数講師が誰も気づいていなかった隠れた問題点が潜んでいました。
決して注意力がないわけでもなくやる気がないわけでもなく、単に知識不足が原因でした。
興味のある方は是非こちらもご覧ください。

参考4年・5年で文章題が物凄く苦手な子の原因はこれかも?「ずつ」

4年生、5年生のお子様で「文章題が物凄く苦手」という場合の原因としてよくある一例をご紹介します。 掛け算・割り算の文章題で次のようなものがあります。問題:算田先生は3人の生徒に1人12個ずつリンゴを配 ...

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文章題が理解できるようになったなら「あれ、頑張ったら分かるようになったぞ?もしかしたら次も同じようにやれば分かるようになるのでは?」となります。
次は和差算、植木算と指導していきました。

和差算はまず「数直線」からの指導です。
数の大小を線の長さで表現するという感覚は、算数が得意な子であれば説明抜きでもすぐ理解しますが、そうでない場合は丁寧な導入が必要です。
「線分図を書けば、ほぅら簡単に解ける!」という解説は、ある一定レベル以上の生徒にのみ有効です。(通常中学受験塾に通う子の場合はクリアしていることが多いですが、必ずしもそうではありません)

植木算は苦労しました。
目に見えないものを想像するのがとても苦手な子でした。
紙に書くだけではイメージしにくいので、床にペットボトルを並べたりして授業しました。

抽象的なことを頭の中でイメージする力は受験勉強後半で絶対に必要になりますので、ここも妥協せずに時間をかけました。
他の単元を挟みながらですが、90分の授業で4回~5回くらいは時間をかけたと思います。

思考停止で公式を教えてしまえば楽なのですが、それをしてしまったら受験勉強の後半で伸びなくなってしまうという予測がありました。
指導は物凄く大変でしたが、文字の世界から実物の植木をイメージするトレーニングを重ねました。

まずは
・勉強とはどんなものなのか
・「出来る」とはどういう状態なのか
・自信をつけ、勉強へのやる気を引き出す

を目指しました。
この時期については、カリキュラムの進度は考えていませんでした。
ここで画一的に「週に1単元」のような進め方をしてしまうと、終盤でツケが回ってくることが確実だからです。

何度も繰り返し指導する方針を保護者の方が理解してくださったのは幸いでした。

宿題についても、最初は確実に一人で解ける問題を2~3問から始め、徐々に家庭学習の習慣をつけていきました。

指導中期 新6年~6年夏

5年生までの指導で、勉強の習慣が少しつき、基本的な数の扱いは出来るようになりました。
予習シリーズに換算すると、4年上の半分くらいがザっと終わったくらいの段階です。

ここから残り一年で、入試レベルまでもっていかなくてはいけません。
この時点では、正直かなり厳しい戦いです。
一般的な受験生が2年かかる道のりを、1年で駆け抜ける必要がある。しかし大量の宿題をこなすだけの勉強体力はまだありません。

通常の戦略では厳しい戦いになりますので、特別な戦略を立てて臨むことにしました。
※以下で紹介するのは、かなり特例的な条件下の生徒に対してのみ有効な戦略です。むやみに真似はしないようにしてください。

戦略 二科に絞る

結論としては、入試形態を四科ではなく二科に絞ることにしました。
保護者の方から、二科にするか四科にするか相談がありました。

算数一科でもかなり厳しい状態です。
理科と社会の知識についても、積み上げはほとんどないと言って良い状態です。
一年で四科全てを入試レベルにもっていくのは非常に厳しいと判断し、二科受験に絞ることにしました。

戦略 割合の概念はどれだけ時間をかけたとしても理解させる

まず絶対に必要だと考えたのが「割合の概念」です。
例えば 30人クラスの20%が欠席した。→30×0.2=6人 のようなものです。

この感覚は絶対に必要です。
ここを暗記で誤魔化しているようでは先々の伸びが見込めません。

「くもわ」の公式に逃げたくなる誘惑を抑えながら、様々な角度から根気強く解説を重ねました。

下のリンクの記事を書いたのがちょうどその時期です。
「割合って、つまり何なの?」という事をこの子に説明するために考えた事を記事にしています。詳しくはこちらをご覧ください。

こちらもCHECK

割合とは何か?「ちょっと」とか「いっぱい」を数値化したもの

今回は「割合とは何か」というテーマで書いていきます。 そもそも割合って何なのでしょうか。教科書的な定期でしたら「比べられる数÷元にする数」ですが、正直何言っているのか分からなくないでしょうか? もっと ...

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戦略 速さの概念を理解させる

算数が苦手な子にとって「速さとは何か?」は当たり前の話ではありません
「自動車の制限時速が時速40㎞」というような話ですら興味を持っていない子もいます。

そんな子に「分速とは1分に進む距離のこと」を理解させるのは大変ですが、避けられません。
速さ×時間=距離 の関係を心から理解するためには必要なことです。

ここで「はじき」を使って関係を暗記してしまえば楽ですが、それではあまりにも……何のために勉強しているのか分からなくなります。

結論から言うと、入試の直前は一部「はじき」を許容しました。
とは言っても、感覚としてある程度速さがイメージできるようになり、その上で確認のために「はじき」の図を書くような程度です。

速さを学習する最初から、いきなり便利ツールとしての「はじき」に頼るのはやはり違うと信じています。
一般生活を送る上でも、速さに感覚を身に着けてくれたのは良かったと思っています。

戦略 図形を後に回す

図形問題の練習は後回しにしました。
というのも、割合と比の学習を優先したかったからです。

確かに図形は再頻出単元です。
しかし、割合と比は入試が近くなってから学習したのではどうしても間に合いません
割合と比の概念を手に入れてから、それが身体に馴染むまでの時間が足りなくなってしまうからです。

第一志望校の問題を見た際に、どの単元は深く理解している必要があるか? どの単元は直前の詰込みでも間に合うか?
分析した結果、苦肉の策として図形を後回しにすることにしました。

これは一般的な戦略ではありません。圧倒的に学習が遅れている状態から巻き返すための異端の戦略です。
4年生や5年生から受験勉強を準備していた通常の受験生は真似しないでください。

戦略 場合の数は捨てる

場合の数は捨てる。
※これも普通はやってはいけません。

しかし、全ての単元を網羅するには時間が足りません。
何かを犠牲にしない事には立ち行かない状況です。

であるならば、何か一つ捨てるのであれば場合の数だと判断しました。
最低限樹形図の書き出しだけは教え、それ以外の計算で求める方法や重複を割るなどについては一切触れませんでした。

理由は二つです。
一つ目は、この子の志望校で場合の数が大問で出題されることは無い。出たとしても小問で、書き出せば答えが出せるタイプの問題がほとんどだったから。
二つ目は、場合の数で習得できる能力がが算数の他の単元との関連性が薄い事です。

例えば「割合」が分からないと、食塩水や売買損益、比も理解が難しくなります。
他の単元との関連が深い単元は捨てるわけにはいきませんが、場合の数は他単元への悪影響が少ないです。

断腸の思いですが、どこか一単元苦手を残すとしたら、それは場合の数だという戦略にしました。

指導後期 6年夏~秋

ここでは「比」がメインテーマとなります。

といっても夏休みの前半は割合や速さ、消去算の復習で時間を使ってしまいました。
焦る気持ちもありましたが、割合や消去算が理解できていない状態で比の学習をしても意味がありません。

「比」は文章題としての比のみを学習します。
「平面図形と比」や「速さと比」は学習しません。志望校の入試で出題されないからです。
保護者の方には意外に思われるかもしれませんが「平面図形と比」や「速さと比」は全部の学校が出題するわけではありません。
上位中堅の学校では花形であり最も出題されるジャンルですが、四谷偏差値40以下の学校では学校によってはほとんど出題されない事もあります。
目指している学校の入試問題を確認してみてください。

消去算は加減法のみを学習し、代入法は捨てました(専門的な話ですみません)
本来はそんなことをやってはいけませんが、仕方ありません。
比の基本問題であれば加減法のみでも戦えます。
「Aの重さはBの2倍より20g重いです」のような形になると代入の考え方が必要になりますが、ここは合否を分けるポイントではないと判断して大胆にカットしました。

※重ねて注意書きをしておきますが、これは一般的な指導法ではありません。圧倒的に知識が少ない状態から1年半で入試レベルまでもっていくための特例的な方法です。
普通に5年生くらいから塾に通っているような生徒さんは真似しないでください。
代入法を使う問題も普通に出題されます。普通は捨てたら合格できません。

追い込み 6年生冬~直前

ここにきて覚醒がありました。
新しい単元を理解するまでに必要な時間が大幅に短くなったのです。

新しい概念・解き方を要領よく理解できるようになりました。
端的に言えば「頭が良くなった」です。

教育に携わる者としてこれほど嬉しい事はありません。
この時「ひょっとしたら合格できるかもしれない!」と思いました。

これまでは正直厳しい戦いだと思っていました。
ここにきて理解力が大幅に上がったのを見て、これは滑り込みで間に合うかもしれないぞ! と気持ちが熱くなったのを覚えています。

これまでなかなか芽が出ませんでしたが、地面の中では着実に根が育っていたのです。
根がしっかりしていましたので、ここから先の成長は今までの比ではないスピードでした。

1回の授業でひとつの単元を確実に理解し、一歩ずつ前に進んでいきました。

埼玉入試開始~2月

埼玉県の入試が1月中旬に始まりました。
この時期はまだ「覚醒し始め」の段階ですので、まだ実力不足の状態でした。

出願した学校名は伏せますが「埼玉県内の通学圏内で一番偏差値の低い学校」です。
2回受験しましたが結果はどちらも不合格。

この学校は見た目の偏差値の割に、問題の難度が高い学校です。
第一志望校の麹町女子とは算数の傾向が異なっていました。
このレベルの難度の問題が解けるようにする練習はしていません。
「偏差値」が低いとはいえ、全く歯が立たなければ合格は出来ません。

さて、この埼玉校3回目の入試が1月の下旬にあります。
複数回受験すれば加点がある学校です。もう一度受ければ合格できるかもしれません。

ただ一方で、受験日が二月入試の3~4日前です。
ここで半日を入試に使ってしまい、勉強時間が減ってしまうのは致命的な打撃です。

迷います。入試で可能性を追うのか、勉強時間を確保するのか。

通常の受験であれば、直前期に半日勉強時間が減った所で大勢に影響がありません。
既に受験範囲の勉強は住んでおり、最後の調整をしている時期だからです。

しかしこの子の場合は違います。
直前の直前、入試前日まで伸びる状態です。今まで身に付けた知識を、使えるレベルまで磨くため問題演習をする時間は1分でも惜しい状況です
特に今は「覚醒」しています。半日の勉強で吸収できる量は無視できません。

保護者の方と相談を重ね、入試を回避して、勉強に専念することにしました。

入試に絶対はありませんので、この決断が吉と出るか凶と出るかは揺蕩っていますが、きっとこちらの方が勝率が高いとにらんで賭けました。

入試~発表

2月1日、麹町女子と、もう一校抑えの学校を受験しました。
が、どちらも不合格でした。

2日に二回目の受験で合格をいただくことができました。
一度不合格からの合格だっただけに、嬉しさはひとしおでした。

どんな状態からでも適切な勉強をすれば成長できる

今回紹介した子は、かなり遅れた状態からの受験勉強スタートでした。
一般的な塾のカリキュラムに沿って勉強していたのでは絶対に成長できませんので、特別な計画を立てて指導しました。

かなり極端なケースですが、それでも目標を達成することができました。
どんな状態からでも、適切な内容をサポートして頑張っていけば成長できます。

もしも今現在大きく出遅れてしまっていたとしても諦めず、しかし漫然と勉強するのでもなく。
今最も必要なものは何か。ゴールから逆算して、どこまで深めて勉強する必要があるのか。
そんな計画を立てて勉強しましょう。

完璧でなくても構いません。私も途中で何回も計画を見直しました。
もしも現在塾の授業についていけていないと感じているならば、現状の分析と計画作成に力を入れてみてはいかがでしょうか。

もしプロに相談したいという事がありましたらご連絡ください。
現状の分析や、計画立案のお手伝いが出来るかと思います。

長い記事を読んでいただきありがとうございます。

【生徒募集】
2023年度の生徒募集状況は満席となっております。
2024年2月以降の生徒も満席となっております。
大変申し訳ありません。

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