5年生で学習することの多い「ニュートン算」について書いていきます。
ニュートン算の考え方には大きく二つの流派に分けられる!というお話です。
まずニュートン算とは次のような問題です。
問題
空の水そうがあります。この水そうについている蛇口を開けると毎分5Lの水が注がれます。しかし水そうの底には穴が開いており、毎分2Lずつ水が漏れ出ていきます。
蛇口を開けると、10分で空の水そうが満水になりました。
水そうの容積は何Lでしょうか?
こんな感じの問題です。非常に基礎的な問題ですが、これを例にとって解説していきます。
ニュートン算とはつまり、何かプラスの仕事(水を入れる)をしながら同時にマイナスの仕事(水を排出する)も行われるような状況についての問題です。
さて、この問題の答えは30Lですが、その求め方には2通りあります。
総量方式と差分方式です(私が勝手に名付けましたので、正式な呼び方ではありません!)
総量方式
10分間での総注水量と総排水量に注目します。
蛇口からは1分間に5L入りますので、10分間では合計で 5×10=50L 注水されます。
一方で穴からは1分間に2Lずつ漏れていますので、10分では合計で 2×10=20L の水が漏れました。
その差である 50-20=30 の30Lが水そうの中に残っているので、水そうの容積は30Lとなります。
10分間で入った水の総量と出た水の総量に注目しています。
差分方式
蛇口からは1分間に5Lの水が入りますが、穴からは1分間に2L漏れてしまいます。
5L水を入れても2Lは漏れてしまいますので、差し引き3Lだけが溜まっていきます。
1分間に3Lの水を溜めることが出来ますので、10分間では (5-2)×10=30L の水を溜めることが出来ます。
よって水そうの容積は30Lです。
1分間で入る水と出る水の差に注目しています。
優劣はない
上で紹介した例題ように、どちらの考え方でも解ける問題が多いです。
塾によってどちらの方法に軸足を置いて指導するかにはカラーが分かれているように思います。
算田の個人的な実感では、SAPIXは差分方式をメインにしていて、四谷早稲アカなどの予習シリーズ系の塾は総量方式をメインにしていることが多いように思えます。(あくまで感想です。現場の先生によっても違いはあると思います)
算田が指導する際は生徒にもよりますが、差分方式の方に軸足を置いて指導する場合が多いです。
総量方式で指導する塾では線分図のようなものを描くことが多く、差分方式で指導する塾ではコップの図のようなものを描くことが多いです。
どちらをメインにしたとしても、問題によっては両方の解法を使い分ける必要が出てきます。
流派が切り替わる問題でつまずきやすい
総量に注目する考え方と差に注目する考え方の二つの流派があると説明しました。
ニュートン算の問題の中には、この総量と差の考え方を一問の中で両方使うことを要求される問題があります。
(厳密には片方のみの解法でも解けますが、不自然になる上に成長の妨げになるのでおすすめしません)
例えば問題の解き始めの方は総量の考え方でうまくいっていたのに、後半では差分の考え方を使って解く、というような問題です。
解き始めは総量の考え方を使っているので解いている途中で頭が切り替わらずに、差分的なアプローチを思いつかないということが起こります。
こんな時にどのように指導したら良いのでしょうか。
それぞれの考え方や解法を教えるのはもちろんですが、それ以上に”二つの流派がある”ということを明確に示しての指導が有効です。
それぞれの問題の解き方は解説することももちろん重要ですが、「この問題はこう解く。こっちの問題はこう解く。」と場当たり的に解説しているだけでは実力が付きません。
「この問題はこっちの解法で解いたけどこの問題は別の解法だった。じゃあテストで出る新しい問題はどっちで解けば良いの?」となってしまっては初見の問題を一人で解く力が身に付きません。
何より生徒に示しておいた方が良いのは”二大流派がある”という分類方法と”片方でダメだったらもう片方を試してみろ”という行動指針です。
もちろん難問になれば比が関わってきたりマルイチを使って消去算的に解いたりと身に付ける解法知識は増えていきます。
しかし本当に根本の考え方、行動指針は基本問題でも難問でも共通しています。
今回はニュートン算を例にとりましたが、他の単元でも同様です。
複数の考え方が入り混じるようなジャンルの問題では、大きな分類としての”流派”を認識し、”片方がダメだったらもう片方を試してみる”というような大まかな行動指針をトレーニングしてあげる事。
こんな感じで指導すると、初見の問題でも一人で何とか工夫して解けるような生徒に育ってくれると思っています!