4年生、5年生のお子様で「文章題が物凄く苦手」という場合の原因としてよくある一例をご紹介します。
掛け算・割り算の文章題で次のようなものがあります。
問題:算田先生は3人の生徒に1人12個ずつリンゴを配りました。さて全部で何個のリンゴを配りましたか?
もちろん答えは 3×12=36個です。
しかしこの問題で手が止まって、悩んで、イチかバチかで36と書いて先生の顔色をうかがって「合ってる……かな?」となっている子は沢山います。
普通の大人からすると、この問題が理解できないという原因がなかなか分からないと思います。
状況を絵で説明したり、実際にリンゴの模型を作って説明しても別の問題になると解けなくなる……
その原因は「1人」と「ずつ」という表現が何を表しているのか知らないというところにあるのかもしれません。
下のセリフ劇をご覧ください
ってなりませんか?普通の話し言葉で「3人に12個配ったんだよね~」ですと、12個12個12個なのか4個4個4個なのか特定できません。
算数の文章では、これを区別するために特別な言い方をします。
12個・12個・12個の状況を指したい時には
「1人12個ずつ配りました」
「1人12個配りました」
「12個ずつ配りました」
のような書き方をします。「1人」と「ずつ」は同じような役割の言葉です。二つとも使っても良いですし、どちらかだけでも意味は通じます。
一方で「4個・4個・4個」の状況を指したい時には、単に「12個のリンゴを配りました」と書くか、又は「全部で12個のリンゴを配りました」のように書きます。
なので、文章題の中に「1人」や「ずつ」のような表現が入っていたら、12個・12個・12個の方の意味なんだよ!
ということを教えてあげると、急激に分かるようになったりします。
これはあくまで一例ですが、子供にとっての分からないポイントというのは大人からは想像もつかない所だったりします。
熱心な先生ほど一生懸命算数を教えるでしょうが、まさか「ずつ」が原因でつまずいているとは思わないでしょう。
国語力の問題だと思われるかもしれませんが、これは決して国語の問題ではありません。
国語の文章では「1人に12個ずつ」のような表現は登場しないからです。
事実を簡潔に述べた文章の意味を読み取る勉強は、むしろ算数の領域です。
算数の問題が日本語の文章で書かれている以上、算数講師は言葉にも敏感にならないといけません。
お子様がどこでつまずいているのか分からない、となった時は、一度前提を疑ってみましょう。
指導者側からすると当然理解できていると思い込んでいる箇所が実は抜けていたというケースは生徒の成績に関わらず発生します。