小学生が意外と知らない計算の仕組みのひとつに「分配法則」があります。
各塾のテキストではあまり時間をかけて教えられない一方で、5年生・6年生の問題の解法には頻繁に登場する考え方です。
消去算や割合の問題の中に分配法則を利用した計算が含まれていると、途端に解けなくなる子が多くなります。
数学を経験している大人にとっては当然の計算ですが、中学受験生は教わらないと分からない考え方です。
塾の授業やテキストの中でも、消去算や割合特有の考え方の部分に解説の比重が置かれてしまい、一見地味な分配法則がサラッと流されてしまっていることが良くあります。
家庭教師としてお子様の間違えた様子を見ていると、実際の原因は、この地味な「分配法則」だったりします。
今回のブログでは、盲点になりがちな弱点として「分配法則」への注意喚起をしたいと思います。
分配法則とは何か? どうやって教えるか?
では最初に、分配法則とはどのようなものなのでしょうか
数学で登場する際にはこのような形になります。
(X+3)×4=4X+12
これが中学受験で登場するのは、次のような場面です。
問題
りんご1個の値段はみかん3個の値段より10円高いです。
りんご2個とみかん4個を買うと320円です。
みかんは1個いくらでしょうか
この問題は次のように解きます。(問題の解説は今回の記事の本筋ではないので、細部は飛ばして書きます。ごめんなさい!)
りんご×1=みかん×3+10円
りんご×2+みかん×4=320円
1行目の式から
りんご×2=(みかん×3+10)×2
=みかん×6+20
の計算をします。ここから
みかん×6+20+みかん×4=320
→みかん×10=300 として、みかんは1個30円。のように求めます。
(解説は大人向けに端折って書いています。ご了承ください!)
さてここで注目してほしいのは、(みかん×3+10)×2の計算です。
(みかん×3+10)×2=みかん×6+20 という計算をするためには分配法則の知識が必要です。
小学生向けには「カッコ外し」と呼んで教えています。
理屈としては「カッコを外す時には、カッコの外側の掛け算を両方にかける」なのですが、これだと理解されにくいので実例で説明します。
2×3.14+8×3.14=? という問題を出すと、生徒たちはすぐに解いてくれます。
2×3.14+8×3.14=(2+8)×3.14 なので、答えは31.4です。
普段は左の式を右にして計算を楽にしています。つまり
2×3.14+8×3.14 → (2+8)×3.14 です。ただ、逆にしても間違ってはいないよね?と問いかけます。
2×3.14+8×3.14 ← (2+8)×3.14 のように右側の式を左側のように変形しても、式として成立はすることを一緒に確認します。
これが「カッコ外し」の仕組みです。
(2+8)×3.14=2×3.14+8×3.14 と
(みかん×3+10)×2=みかん×6+20 を対応させて理解できるようにします。
解けない原因は意外なところにあるかも?
一見すると「消去算や割合の問題で、たまに難しくて解けない問題がある」という感覚を持っているお子様がいたとします。もしかすると分からない原因はもっと根本的な考え方や計算方法の部分にあるのかもしれないのです。
こんかい紹介した分配法則はあくまで一例で、家庭教師としてマンツーマンでお子様の勉強を見ていると、本当に意外なところでつまずいていたりします。
お子様本人が「なるほど。ボクが苦手なのはこの分配法則の計算だな!よし。ここを集中的に練習しよう!」と思えれば良いのですが、そんなことはなかなか難しいです。
かといって闇雲に同単元の問題を解いたとしても、分配法則の含まれていない問題は普通に解けてしまうので、本人の感覚としては「たまに解けない問題がある。なんでだろう?」となってしまいます。
今回紹介した分配法則は「よくある苦手ポイント」の一つですので、ご家庭で勉強を見られる際には「もしかしたら分かっていないかも?」と気を付けてみてあげてください。