今回は偏差値が非常に高い4年生・5年生の子に算数を教える際のことを記事にします。
SAPIXで言えばαクラスで安定しているような子です。
目次
算数が得意な子に共通している特徴
①字が汚くて雑
小学4年生・5年生で算数が非常に得意な子は、ほぼ共通して字が汚くて雑です。
速記か暗号のような字を書いて、時に計算ミスで失点したりします。
頭の回転が非常に速いので、思考のスピードに手が追いつかないのでしょう。
考えが次から次へとあふれ出るので、そのスピードを止めないように文字を書くと急いで書くことになるため雑な文字になります。
「成績上位生」までは字の綺麗な子もいますが、本当のトップ層になると雑な子がほとんどです。(特に男の子は傾向が顕著)
6年生になると文字を綺麗に書くことによるミス低減効果に気づいて自発的に改善する子もいますが、4年・5年の段階では文字の汚さは仕方がないとあきらめましょう
②式や図を書きたがらない
4年・5年の算数成績トップ層は、みな一様に図や式を書きたがりません。
理由は単純で、式や図を書かなくても理解できてしまうのです。
彼らは頭の中の短期記憶の容量(ワーキングメモリ)が非常に大きいです。
多くの情報量を頭の中だけで記憶して考えることが出来ます。
一般の大人でも理解が難しいような長文を、じっとみつめるだけで解きほぐして解答できてしまいます。
そうした能力を持った子にとって、式や図は無用の長物に思えてしまっても無理はありません。
「書かなくても解けるのに、なんで書かなきゃいけないの?」と思っていることでしょう。
③先生の言うことを素直には聞かない
4年生・5年生くらいになれば、自分が「頭がいい」方に属することは何となく分かっています。
そして、大人が解けないような問題でも解けたりすることも分かっています。
すると彼らは、相手が大人だというだけでは言うことを聞きません。
自分が納得できるだけの理由がない限りは、大人の言うことに従いません。
特に「算数の問題の解き方」という、自分が自信を持っている分野についてやり方を変えろと言われたのなら、まず反発するのが普通です。
対策・指導方針
私が指導する場合の指導方針を一部書いてみます。
もちろん一人ひとりの状況に応じて変えますので一概には言えませんが、多くの場合に当てはまる方針だとお考え下さい。
①字の汚さはしばらく放置
文字が雑で汚いことについては、しばらく放置します。
前述したように、頭のいい子の文字が汚い理由は、思考力と筆記力の発達がアンバランスなことにあります。
脳の成長スピードに手が追いついていないのです。
この段階で無理に字を綺麗に書くように矯正してしまうと、思考スピードが落ちてしまう恐れがあります。
文字は6年生になってからでも綺麗に直すことが出来ますが、思考スピードは急には伸ばせません。
開成・桜蔭などのトップ校を受けるのなら、思考力を伸ばすことが最優先事項です。
最低限の指導として「文字を大きく書こう」や「筆算は縦に揃えて書こう」くらいは言いますが、5年生までは放置の方針を取っています。
(この辺りは先生によって方針が分かれるかもしれません。算田は5年生の終盤くらいまでは許容する方針です)
②図や表の有効性を認められるように
頭のいい子が式や図を書かない理由は、書かなくても理解できてしまうからです。
では書かなくてもいいのか? というと、やはりそれでも書いた方が良いです。
4年・5年の問題はこの層の子たちにとっては単純すぎて、式や図を書かなくても理解できてしまいます。
しかし6年生になり入試問題になると加速度的に問題が複雑化します。
するとこの層の子たちでもさすがに頭の中だけでは理解しきれなくなり、ここでいよいよ図を書く必要性に迫られます。
しかし今まで図や式を書く練習をしてきていないため、作図技術が未熟なまま入試直前期に慌てることになる……と言うのが最悪のシナリオです。
これを避けるためにも、5年生くらいからは作図や立式の練習をしておくべきです。
しかし繰り返しますが、塾のテキストの問題は簡単すぎて作図しなくても解けてしまいます。
ではどうしたらいいのか?
この子たちでも理解し切れないような複雑な問題を出題するしかありません。
問題は「中学への算数」などから抜粋します。
これでもかというくらいに複雑な問題を選び「複雑すぎて把握できない!」となった所で、間髪置かずに作図方法を教えるのです。
この複雑な問題も……図を書けば情報が整理できてホラ簡単に解ける! さぁ作図の練習をしよう! ……というところまで演出してあげないと、図を書くやる気になってくれません。
本当に大変です。頭のいい子たちに作図・立式の指導をするのは、シナリオライターばりに台本を考えて演出します。
5年生の後半から6年生の最初期あたりでこの作業をすることが出来ると、今後の伸びが大きく違います。
元来思考力が非常に高い子です。その子が作図や立式もできるようになれば鬼に金棒です。
③理由を論理的に説明し、数字で証拠を示す
この層の子たちに言うことを聞かせるために使う方法は、大人相手の時と同じです。
会社の上司に提案したり説明をする際に気を付けることと同じだと考えてもらえば大体合っています。
生徒が用いている解き方ではなくて別の解き方を使った方が良いということを指導したい場合を考えてみましょう。
「こっちの解き方の方が良いからこっちにしなさい!」
と高圧的に言ったところで、反発するか、屁理屈を並べるか、口だけ分かったと言って聞かないかの3択です!
論理で説得するしかありません。
例えば「6年生になるとこういう問題が出るようになる。するとこっちの解き方では通用しなくなる」や「この図を書くと、ここの比に気が付きやすくなる。距離や時間が一定の状況を把握するのに線分図は有効」のような感じです。
数字で説得する方法も有効です。
「開成中学ではこの解き方を想定した問題を多く出してる。例えば20XX年の~」や「SAPIXのマンスリーテストはこの計算の工夫を毎年出題している」
のように事実ベースで説得します。
まとめ
本当のトップ層の子達を指導する際には解説のスタイルが変わります。
ただ上から言うだけではなく、背景知識や作問意図も余さず伝え、時には生徒と同じ目線での説明も織り交ぜつつ、生徒をより高い位置に導いていくことが必要です。
一番気を付けるのは「角を矯めて牛を殺す」にならないようにすることです。
字を綺麗にさせるあまり才能を潰してしまっては元も子もありません。
成績はいいけれども指導の扱いに困っているというご家庭がいらっしゃいましたら、是非一度ご相談ください。