第二回サピックスオープンが行われました。
やはり今回も良問揃いです。
「今の時期の受験生は間違えやすいが入試までには必須の知識」を詰め込んだような印象です。
算数A問題について、特筆すべき問題を簡単に講評していきます。
他の単元との隠れた関連性や、保護者の方から見ると簡単そうな問題の意外な難しさなどに焦点を当てて書いていきます。
大問1 計算問題
最初の大問というと、単純な四則計算というイメージがあるかもしれませんが、サピックスオープンではそうとも限りません。
(1)は四則計算ですが、(2) ケタをずらした上で、同じものをまとめる問題です。
こういった計算の工夫問題は、入試でもこのまま出題されてもおかしくない問題です。
しかし計算の工夫はサピックスの授業でしっかり時間をとって教えてもらう部分ではありません。
本当は6年生のカリキュラムで1回を使って、その週まるごと「計算の工夫」という授業をしてもいいくらいなのですが、そういった回は設定されていません。
基礎トレなどの問題を通じて学ぶしかないのですが、基礎トレは先生の解説が入らないので、わからない子はいつまでもわからないままになっていたりします。
工夫の方法を知らまいまま地道に計算するとものすごく面倒なので、計算が嫌いになり毎日の基礎トレがストレスになり……
偏差値にかかわらず、計算の工夫の技術が欠落している子はいます。
今回(2)でバツがついてしまった場合は、計算の工夫に関する問題の特訓を、夏までのどこかで必ず時間をとって勉強しておきましょう。
計算の工夫は体系化すれば高々数パターンしかありません。1日か2日かければかなりのレベルになりますので、多少なりとも余裕があるときに勉強すると良いでしょう。
(3)は、計算問題に見せかけて、比と割合の問題です。
180に同じものを足し引きしている、という発想が大切です。
この型の計算は、たとえば流水算などを解く際に特徴的に現れます。
サピックスオープンの問題は (180+□):(180-□)=5:3 と計算式をそのまま出されていますが、これを流水算の問題に置き換えると次のようになります。
例題:静水時の速さが分速180mの船があります。上流のA町と下流のB町の間を往復する。上りにかかった時間と下りにかかった時間の比は5:3でした。この川の流速は分速何mか。
という文章題の場合も、SO大問1(3)と全く同じく
(180+□):(180-□)=5:3
という式が現れます
かなり応用範囲の広い問題ですので、しっかりと復習しておきましょう。
大問2速さと比
(4)この手の問題は、5年生まではあまり登場せず、6年生で習得すべき部類の速さの問題です。
5年生で習うような、基本の速さと比の問題はこんな感じです。
問題:AさんとBさんの速さの比は3:2です。二人が同じ距離を進むときにかかる時間の比は何:何ですか。 答え 2:3
単純化するとこんな感じです。もちろん実際の問題では、文章を複雑にして条件を巧妙に隠してきますが、核となる部分はこの考え方です。
つまり、速さの比が分かっていて、2人の進む距離が同じであれば、かかる時間の比は速さの比から求めることができます。
しかしSOで出題されていた問題は次のような問題のタイプです。
問題:AさんとBさんの速さの比は3:2です。Aさんは600m、Bさんは300mの距離を歩きました。2人が歩いた時間の比は何:何ですか。 答え 4:3
のような問題です。
つまり速さの比が与えられているけれども、距離が一定ではないのです。
この考え方は、具体例は割愛しますが平面図形・売買損益・食塩水など、比と割合が関わる問題ならどんな単元にも複合させることができる、汎用性の高いパターンです。
今回のSOでは速さで出題されましたが、本質的な考え方をとらえて、他の単元にも応用できるように勉強すると良いです。
このあたりの速さと比に関する内容は、今度記事で書いてみようと思います。
大問3図形
(3)平行四辺形の内部に線を何本か引いて、その比を求める問題です。
この問題はシンプルですのでそれほど難しくありませんが、このパターンの派生形は入試でもよく出ます。
もう何本か線をつけ足したり、線を引く位置が頂点からではなく、辺の途中からになったりすると難しくなります。
鴎友中学などは特徴的で、ほぼ毎年この手の問題を出しています。(もちろん鴎友の入試はこれより5段階くらい難しくした問題です)
大問4売買損益
個数が関わる売買損益です。
仕入れ値を1とおいて、定価を2.5、売値は3割引きなので1.75とおいて計算していきます。
私の個人的な感覚では、この「個数が関係する売買損益」は、きちんとした指導者が入っていない場合は苦手としてしまいやすい単元になります。
サピックスの授業と家庭学習だけで、この個数の売買損益が得意だという子は少数です。
それなりに本腰を入れて勉強しないといけない単元の一つです。入試でも中堅校以上では普通に出題されます。
偏差値50以上の子の場合は、個数付き売買損益は夏~秋にかけて強化すべき単元の一つです。
偏差値で50以下の場合には、もう1段階基礎の、個数が1個の場合の売買損益から強化したほうが良いケースが多いです。
大問6 場合の数
まさに以前、こちらの記事で私が指摘した論点と全く同じところを出題してきました。
場合の数の問題で、設問の細かい違いによって考え方が変わるという切り口で問題を作ってきました。
やはりサピックスも、場合の数における解法の切り替えは大切だと考えているようです。
(1)~(3)と問題が分かれていますが、3問とも状況設定が微妙に異なり、用いる解法が変わります。
(1)は、6色のボールをAとCの袋に入れますが、Aの袋が2個までで、Cの袋が4個までですので、玉を何個入れるかに選択肢はありません。Aに2個、Cに4個入れるしかありません。
あとは色の組み合わせを計算するだけです。
(2)になると、Bの袋は3個まで入り、Cの袋には4個まで入るので、6色の玉を入れる際に、B2個-C4個 と入れる場合と B3個-C3個と入れる場合の2通りあります。
それぞれについて計算して求めます。
(3)は、ABCすべての袋を使う場合ですので、(2)と似た解法を使えますが、場合分けの数がかなり増えます。
場合の数の本質的考え方が分かっている子であれば全問正解できたでしょうが、今の時期にここまでの完成度に達している子は少数だと思います。
ただ、場合の数の学習をどこまで行うかは志望校によって異なります。学校によってはほとんど出題しないという学校もあります。
あまり出題しない学校を第一志望としている場合には、それほど力を入れて学習しなくてもよいと思います。最低限の計算で求める方法を覚えて、あとは書き出しを正確に行う練習を積んでおけば大体の問題には対処できるようになります。
一方で場合の数がよく出題される学校を受ける場合には、この大問6がきちんと解けるレベルを目指す必要があります。
サピックスオープンの最後の問題だからと言って、決して妙な難問ではありません。ギリギリ基本問題の範疇に入ると言って良い出題でしょう。
少し駆け足になりましたが、サピックスオープンの問題講評は以上です。
サピオープンの算数Aは、実に良い問題が多いです。
できなかった箇所は何かしらの力が足りないことの現れですので、よくよく復習しておきましょう。
算数Bは一部の難関校を受ける子以外はさほど力を入れて復習はしなくて良いです。
算数Aは、「ちょうど今の時期間違えそうな良問」のオンパレードです。点数が低かったからと言ってショックを受けず、間違えた問題で足りなかった力を学習しましょう。
模試は終わった後の復習が一番大事です。
ここであぶりだされた弱点を、6・7月で克服していきましょう!