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中学受験 算数の解法・技術論

算数が超得意な子には何を教えるか?【カレーと肉じゃがの共通点】

算数が得意な子と苦手な子、どちらを指導することが多いかと聞かれれば、それはやはり苦手な子のほうが多いです。
苦手科目の強化で家庭教師をつけるというご家庭が多いですよね。

一方で、算数が超得意なのでもっと伸ばしたいと指導を依頼されることもあります。
志望校が開成や麻布のような最難関校の場合には、得意だけど更にもうひと伸びしてほしいと依頼を受けることが多いです。
私の体感的には、苦手な生徒が7割、得意な生徒が3割くらいの割合で指導しています。

算数がとても得意な子にはどういった指導が有効なのかについて語っていきます。
これまでは苦手な子への指導に関する記事が多かったので、今回は一転して超得意な子の場合で書いていきます。
(苦手な子への指導に関する記事はこちら)

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算数がとてもとても得意な子には、どのような指導が有効なのでしょうか

超難問を教えようか? 特別な解き方を教える? 塾の先の単元を先取りする?

もしろんこれらも有効ですし、実際にやっています。
でもこれだけでは味気ないような気がします。

せっかく家庭教師として1対1でやるんですから、もっと付加価値を出していきたいところです。

算数が得意な子を指導する際に時折やっていることがあります。それは

既存の問題を新しい切り口で解説するということです。
つまり新しい視点を提供することを狙っています。

新しい価値観や物のとらえ方を発見したときに人は大きく成長します。
これは勉強に限った話ではありません。

例えばサッカーであれば、強いシュートを打つばかりではなく、フェイントを入れるという選択肢を習得したとき。
例えば将棋であれば、ひたすら攻めるばかりだったのが、王将を囲って守るという発想を獲得したとき。
例えば車の運転であれば、自分のことだけ考えるのではなく、他の車がどのように動いてくるかが予想できるようになったとき。

こんな風に今までは考えもしなかった新しい視点を獲得すると、人は急成長します。

これを算数でやろうとしています!
例を2つ出してみます。

新しい切り口で分類

一つは以前場合の数の記事にも書いたように、既存の問題を新しい切り口で分類することです。

中学受験の問題は様々なバリエーションで無数のパターンがあります。
これは完全暗記で乗り切るには多すぎる分量です。
そのため上手に分類して覚えていくことが有効です。

一般的なテキストで使われている既存の枠組みでは「速さ」や「場合の数」くらいの大きな分類ですし、もう少し細分化したとしても「並び替え」や「組み合わせ」のような分類が精々です。

高校生くらいになれば、この分類作業(問題ごとの共通項を探し出すこと)が一人で上手にできるようになります。
しかし小学生にはまだ難しいことです。
そこで指導者の出番です。

膨大な数の問題を、汎用性の高い本質的考え方に分解して示してあげます。
すると単元の全体像が見えてくるので、一気に勉強が楽しくなってきます。

新しい視点を提供する

「そんな見方があったのか~」というような発想を提供してあげることです。

これも説明してもわかりづらいので、具体例を一つ出してみますね。

「売買損益」と「ニュートン算」と「旅人算の追いかけ」には共通点があると言われたら、どう思いますか?

ほとんどの子は、この3つの単元に共通点があるなんて思いもしません。でも説明されたら誰でもわかります。
簡単な例で軽く解説してみますね。

例えば売買損益の問題とはこんな感じです。

問題:ある品物を1個100円で仕入れて、120円で売りました。30個仕入れてすべて売れたとすると、利益はいくらですか?
式:(120-100)×30=600
答え:600円

こんな感じです。100円で仕入れて120円で売っているので、品物を1個売る毎に20円の利益が蓄積されていきます。
1個当たり利益の20円に個数の30をかけて利益を求めます。

これはニュートン算の問題になると次のような感じです。

問題:井戸に水が大量にたまっています。この井戸には1分間に100Lの水が湧き出ています。井戸の水を1分間に120Lずつポンプでくみ上げていきます。ポンプを30分間動かしても、まだ井戸の中に水が残っていました。ポンプを動かした30分間で、井戸の水は何L減りましたか?
式:(120-100)×30=600
答え600L

先ほどの売買損益の問題と同じ式になりましたね。このニュートン算では、1分当たりに湧き出る水とくみだす水の差に注目しています。
1分に100Lの水が湧き出すと同時に1分に120Lの水を汲みだすので、差し引きして1分に20Lずつ水が減ることになります。
「品物1個当たりの原価と売値の差」と「1分当たりに湧き出る水とくみだす水の差」という言葉の違いはあれど、算数的にはほとんど同じ問題になっています。

最後に、旅人算の問題に置き換えてみましょう。

問題:Aさんは分速120m、Bさんは分速100mで、同じ場所を同時に出発し、まっすぐな道を走っていきます。30分後に2人は何m離れていますか。
式:(120-100)×30=600
答え:600m

共通点が分かってきましたでしょうか?
そうなんです。同じ計算式なんです。
これも、AさんとBさんが「1分当たりに走る距離の差」に注目して解いています。

以上の3問に共通する考え方は「1(個・分)あたりの差」という考え方です

言われてみれば簡単に理解できるのですが、あまり普通の塾の授業では習わない発想です。
それぞれの単元の内部で使う解法は当然習いますが、単元を横断した基本的な考え方というところにまで踏み込んで教えてくれる先生はあまりいないです。(もし習っている先生がそこまで踏み込んでくれる先生なら、その方はいい先生です!)

この記事で紹介した3問を勉強したところで、新しい知識は何も増えていませんね。
問題自体はみんな知っている問題ですし、すぐに解ける簡単な問題です。
それでも問題ごとの共通点という視点を獲得したことで、一段上のステージに進めます。
知識を増やすだけが勉強ではなく、時にはこのように既存の知識を整理することも必要です。

特に算数が上位の子にはこういった指導が必須です。
単純な解法知識は塾の授業や家庭学習でかなりのレベルまで覚えていますので、家庭教師としては知識の拡充をすると同時に、その整理のサポートをしてあげるイメージです。
御三家のような超難関校の問題は、こういった本質的な部分まで理解できているかということを上手に設問の中で試してきます。本当によくできています。

今回紹介したのはほんの一例ですが、こんなことを指導できると、他ではできない指導ということで、家庭教師として付加価値になるかなと考えています。
「売買損益とニュートン算と速さには単位量当たりの差に着目するという共通点がある」ということは、ぜひお子様にも教えてあげてください。


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