こんなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
兄と弟を間違える。時速と分速を間違える。Aに当てはまる数字を求めるのにBの数字を答える。
中学受験生ならば誰もが経験するでしょう。
こうした読み間違いミスが非常に多発する生徒がいます。
大事なクラス分けテストでもこうしたもったいない間違いをしてしまい、気を付けるように何度注意しても直らない……
こういったお悩みがもしかしたら改善するかもしれない、一つの方法を提案しようと思います。
今回紹介するのは、劇的に改善する魔法のような方法ではなく、「ちょっと改善するかもしれない」方法です。
私が実際に授業内で使っている方法で、その結果は「即効性はないが、継続すると少しずつ改善する」です。
興味のある方はぜひ読んでください!
目次
どうしたら直るのか
結論から書きますと
「あぁ!やっちまった!」と思う回数を増やすことです。
人間誰しも失敗します。そして失敗した後には「もう二度とやるまい」と固く誓います。
失敗した直後はあれほど固く決意しても、数日経ったらケロッと忘れてしまうものです。喉元過ぎればなんとやら、です。
しかし受験勉強ではこれでは困ります。
テストでいつもいつもこんな間違いを続けて「このミスがなければもっと点数高かったのに~」と言い続けて、気づけば6年生の2月。ということになりかねません。
喉元を過ぎても熱さを忘れないようにするためには、一言にまとめると「やっちまった感」を高めることです。
ミスをした記憶と、次からはちゃんと確認しようという決意を長続きさせることが必要です。間違えた直後に感じた「やっちまった!」という失敗の経験を頭に強く刻み込むほど忘れにくくなります。
頭に強く刻み込むためには、強い感情が必要です。
感情を伴わない記憶は一過性のモノになりやすいです。
ですので指導の場では、ミスをした直後に正しく危機感を感じてもらうことが目的になります。
それでは、どうすれば子供が危機感を感じ、「やっちまった感」を増大させることが出来るのでしょうか。
ダメな声掛け「気をつけなさい!」
まずは最も効果がない声掛けから紹介します。
それが「気をつけなさい!」や「注意しなさい!」です。何の意味もありません。念仏を唱えていた方がいくらかマシです。
大人の世界でも同じでしょう。ミスをした部下がいたとして、ミス防止の対策が「次からは気を付けなさい」では不安ですよね。
「気を付ける」ができないからミスをしているわけで、出来ないことを決意表明として口に出してもできないことには変わりありません。
もっと根本から変えていかなくてはいけません。
もう一つ「気をつけなさい!」には危険があります。
ミスが続いた場合に「気をつけなさいって言ったのになんでまた間違えるの!」という最悪の連鎖反応が発動してしまいます。
これを言われた子供は反論ができず、完全に追い込まれます。
「だって気を付けたけどそれでも間違えちゃうんだよ……」
改善効果がない上に、「あれだけ言ったのになんでまた」まで連鎖反応がつながることで精神的に追い込んでしまう。
今すぐやめましょう。
ポイント
「気をつけなさい」は無意味
ダメな対策「確認することをルールにする」
よし。解答欄に答えを書く前に、必ずそれで合っているか確認することをルールにしよう。
これならミスもなくなるんじゃないか?
残念ながらこれも大きな効果は期待できません。
確認することをルールにしたところで、そのルール自体を忘れます。
また、テストで時間が足りなくて焦っていると、ルールはいとも簡単に省略化されます。
皆様も経験はありませんか? 本社が作成したチェックリストや作業手順が、現場の運用で形骸化してしまっていること。
一回決めたルールが、時間とともになぁなぁになって守られなくなる様子。
そんなものです。「確認することをルールにしましょう」とだけ言って本当に必ず確認がなされるようになるならば誰も苦労しません。世界から事故が無くなります。
ポイント
ルールは必ず形骸化する
お勧めの声掛け「その数字は間違ってないけど答えはそれじゃない」
さてそれでは私が色々試してみた中で、これは効果があるのでは? と感じている対策をご紹介します。
生徒が解いた問題を私がマルつけしていて、「例のミス」を発見したとします。つまり、兄と弟を間違えていたり、時速と分速を間違えたような解答を発見した際の声掛けです。
この時に「兄と弟を逆にしているよ」や「どこかに間違いがあるよ。探してみよう」とは言いません。
その数字を出すことは間違っていないけど、答えはそれじゃない」のように言うようにしています。
どういうことなのか、順に説明していきます。
「兄と弟を逆にしているよ」ではなぜいけないのか
「ほらここ!兄と弟を逆にして書いてるじゃん!まったくもう!」
という指摘では余り改善が期待できません。
なにが間違っているのかすぐに言ってしまうと、子供に強い感情が呼び起こされません。
「な~んだ逆にしちゃった~ケアレスミス~」くらいに軽く考えられてしまいます。
簡単に答えを教えてもらっては、たいしたことないように思ってしまいます。
もっと強い焦りと危機感を呼び起こさないといけません。
「どこかに間違いがあるよ。探してごらん」ではなぜいけないのか
それなら「どこかに間違いがあるから自分で探してみよう!」のように指摘して、自分で間違えた箇所を探させるのはどうだろう? これなら必死に間違いを探すだろうし、強く記憶にも残るんじゃないかな
一見もっともな意見なのですが、算田はこれでは少し弱いと思います。
こんな光景が目に浮かびます。最後のたぬきちくんのセリフ「な~んだこんなことだったのか」がポイントです。
「どこかに間違いがある」とだけ言われた場合に、まず最初に疑うのは計算ミスであり、次に疑うポイントも、式の間違やそういった部分です。
「最後の最後で答えるべきものを間違えた」という可能性にはなかなか思い至りません。
様々な可能性をさんざん検討して、最後の最後に見つけたミスがこんな「単純な」ものだったらどう思うでしょうか。
「な~んだ」と拍子抜けする気がしませんか?
これでは当初の目的であった、強い危機感を喚起するということが達成されません。
子供に考えさせるという所までは良かったのですが、あと一歩でした。
では次に私のおすすめを説明します。
「その数字は間違ってないけど答えはそれじゃない」
今まで色々と試してみた結果、ミスの改善がみられる指摘の方法がありますのでご紹介します。
「その数字は使う数字なんだよ~計算も合っているんだけどな~でも答えはそれじゃないんだ」のように言うようにしています。
生徒自身で間違えを見つけてもらうという目的は先ほどと同じです。
異なる点は、「その数字は間違っていないけれど答えはそれじゃない」という言い方でヒントを出しています。
つまり、どこを間違えたか探す際に、その探す範囲を絞っているのです。
こういう言い方をされたら、何か読み間違いのようなミスをしているのかな?とまずそこから確認を始めますよね。
使う数字だけれども答えが違う。と聞くと、みんな大慌てで見直しを始めます。
問題文を読み返して、何を問われていたのかを今一度確認します。
そして自分の解答と見比べて
あ!!! と気づきます。
考える範囲を絞ってあげることで、考えはじめ→答えの発見 までの時間を短くしてあげます。
そうすることで、しっかりと「ヤバいまちがえた!?」という危機感を経験し、その後の「こんなところを間違えてしまった……!」というショックの感情までをノンストップで繋げます。
こうすることで、比較的強く記憶に残すことが出来るのではないかと思っています。
私の経験上、こうした声掛けを20回~30回続けると改善がみられるように思います。
そうなんです。魔法のように1回で直る方法ではありません。
ただ、単純に「気をつけなさい!」と100回言っても直らないでしょうが、紹介した様にうまく危機感を刺激し続けられれば、時間はかかりますが改善していきます。
気長な指導にはなりますが、6年生でも今から始めれば十分入試に間に合います。
5年生ならば、今のうちから改善できれば、テストで悔しい思いをする回数が減ります。
試してみてはいかがでしょうか?