中学受験で算数の成績が低迷している6年生を逆転させるための戦略を書いていきます。
「低迷」の定義は、おおむねSAPIX偏差値で40以下、四谷・日能研偏差値で45以下、首都圏模試偏差値で50以下とします。(あくまで目安です)
目次
1 いつごろまでに手を打つべきか
2-1 まず何から手を付けるべきか
2-2 入試の頻出って平面図形や旅人算じゃないの?
2-3 なぜ比と割合を平面図形や旅人算よりも先にやるべきなのか
2-4 比と割合より前に学習すべき内容
3 まとめ・学習すべき順番
番外編①食塩水や売買損益って、平面図形や旅人算に関係あるの?
番外編②「場合の数」は後回しにする
最後に
1 いつごろまでに手を打つべきか
算数の抜本的な対策は夏休みの入り口が最終ラインだと思っています。算数学習の大手術を行える最後のチャンスが夏休みです。
2-1 まず何から手を付けるべきか
成績低迷している子が逆転するための必須条件があります。
「比と割合」を本質から理解することです。
表面上の解法ではなく、本質からの理解です。
その理由を順を追って説明します。
目次
2-2 入試の頻出って平面図形や旅人算じゃないの?
疑問に思われる方もいらっしゃるでしょうか。
たしかに入試問題での最頻出単元といえば「平面図形」と「旅人算(速さ)」が有名です。成績を上げるためにはこの2単元に力を入れるべきではないかと思われるかもしれません。
しかし違います。まず注力すべきなのは「比と割合」です。
具体的には「倍数算」「還元算」「相当算」「食塩水」「売買損益」などです。
「比と割合」というと、ネーミングが地味なため軽んじられがちです。
「ニュートン算」や「ダイヤグラム」などは名前が格好いいので大事だと思われがちですが、違います。比と割合です。もう一度言いますが、比と割合です。
2-3 なぜ比と割合を平面図形や旅人算よりも先にやるべきなのか
6年生の平面図形や旅人算は常に比や割合と複合した問題になるからです。例えば平面図形であれば相似が代表例。旅人算でも、「AさんとBさんの速さの比は2:3です」のように比を利用した文章題になります。
つまり比と割合が理解できていないと平面図形や旅人算の本質ではない部分でつまずいてしまうのです。
平面図形がそもそも難しいにもかかわらず、その上さらに比と割合も分からない状態ではどうなるか。2つの単元を同時に学習するようなものです。無理があります。
まずは各個撃破です。単独の比と割合を攻略してから、強敵に挑むべきです。
2-4 比と割合より前に学習すべき内容
生徒によっては、比と割合の学習に入る前に学習しなくてはならない単元があります。
「和と差」と「数の性質」です。具体的にすると「和差算」「つるかめ算」や「約数・倍数」「規則性」です。
あくまで目安ですが、SAPIX偏差値で40以下、四谷大塚・日能研偏差値で45以下、首都圏模試偏差値で50以下の場合は、こちらに該当することが多いです。
先ほど「比と割合」が図形や速さの基礎となると説明しました。
実は「比と割合」の基礎となる単元が「和と差」や「数の性質」なのです。
比と割合の問題を学習する上で、和差算や鶴亀算、約数倍数などは前提知識として問題に組み込まれてしまっているのです。
2-3でお話した内容と同じ構造ですね。「平面図形」や「速さ」を学習する前に「比と割合」を学ぶべきなのと同じ理由で、「比と割合」を学習する前に最低限「和と差」と「数の性質」の基本だけは分かっておく必要があります。
この2-4の部分については、基本が分かっているようならば飛ばして大丈夫です。
「和と差」や「数の性質」も応用問題となると難問になりますが、まずは比と割合を学習する上で困らないくらいのレベルまで引き上げられればOKです。
3 まとめ・学習すべき順番
- 和と差 数の性質
- 比と割合
- 平面図形と比・割合 旅人算と比・割合
- 立体図形 点の移動とグラフ 容器に水を入れる ダイヤグラム など
- 場合の数
あくまで一般論ですが、算数が大いに苦手な子にはこの順番を基本として学習計画を立てることが多いです。
(もちろんひとりひとりの状況に応じて最適にカスタマイズします。)
お察しかとは思いますが、SAPIXや早稲田アカデミーにお通いの生徒さんを指導する際、算数が非常に苦手な場合は、塾のカリキュラムは無視します。
塾のカリキュラムは基本的に中位~上位をターゲットに設計されていますので、その教科を苦手としてしまっている生徒には必ずしも適してはいません。
SAPIXや早稲田アカデミーでは、比と割合の単元だけ丁寧に何週間も指導してくれたりはしないのです。算数が苦手な子にはそれが最も必要にもかかわらずです。
算田が指導する場合で算数が大きく出遅れている生徒の場合には、保護者の方と綿密に話し合って方針を理解していただいた上で、塾の進度とは関係なく必要な単元から順に指導を積み上げていきます。
番外編① 食塩水や売買損益って、平面図形や旅人算に関係あるの?
答え:あります。
しかしこうした疑問をお持ちの方もいるでしょう。「相当算」や「還元算」などが図形や速さにつながるのは分かるけれども、食塩水や売買損益は独立した単元であって、他の分野とは関連性が薄いのでは? と思うかもしれません。
違います。大いに関連があります。
まず食塩水は「~を元にした時の~の占める割合」という考え方に馴染む良い練習になります。
売買損益は「~をマルイチ①とおく」という考え方の良い練習になります。
これらの発想は、例えば「三角形ABCの面積を①とした際に、平行四辺形ABDEの面積はいくらでしょうか」や「AとBの速さの比は3:2です。Aが4時間走り、Bが5時間走ると、2人の進んだ距離の比は何:何でしょうか」のような問題につながります。
軽視してはいけません。食塩水も売買損益も他と関連している重要な単元です。
(少し脱線しますが、倍数算や仕事算も、このマルイチ(①)の考え方を理解するうえで必要な単元です。)
番外編② 「場合の数」は後回しにする
全ての単元に力を入れることは出来ません。どこかに注力すれば、どこかが手薄になります。それは仕方がありません。
さて、どこを手薄にするかと聞かれたら、場合の数を犠牲にすることにしています。
これは場合の数が大事ではないとか、入試に出ないということではありません。大事ですし、入試に出ます。
しかしある理由により、私は何かを犠牲にしなければならないのなら場合の数を選んでいます。
その理由は「他の単元への影響力」です。
上で述べた「比と割合」は他単元への影響力が非常に高いことはすでに説明しました。
反対に、場合の数は他の単元への影響がほとんどありません。単元内で完結した、独立した分野といっても過言ではありません。
場合の数とは簡単に言うと、「何通りですか」と聞かれるような問題です。「A,B,C,D,Eの5人をから3人を選んで1列に並べる並べ方は何通りですか」のような問題です。
この考え方は、平面図形にも旅人算にも影響しません。場合の数が苦手でも、その苦手の影響が場合の数だけに留まるのです。
この理由により、やむを得ず何かの単元の学習を後回しにせざるを得ない場合には、場合の数に犠牲になってもらっています。
(一旦後回しにはしますが、遅くとも晩秋ごろまでには対策を開始します。場合の数の学習法はまた別の機会に書きます)
最後に
ここまで長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
一度苦手に陥ってしまうと、どこから手を付けたらよいのか分からなくなり、二度と浮上できないというケースが散見されます。
頑張りたいという気持ちがあるのに、何をどう頑張ればよいのか分からないというのはとても悲しい状況です。
手の付けようがないほど悪化した戦況の中でも、対処法はあるものです。
悲観せず、正しい方向に一歩一歩進んでいけばいつか光は見えてきます。
頑張りましょう。
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