速さや旅人算の問題での考え方・頭の使い方について解説していきます。
よくあるような解法レベルの物ではなく、思考法のような内容になります。
一般的に「センス」や「とにかく手を動かす」というような曖昧な言葉で言われている要素を出来る限り言語化し、具体的な練習方法に落とし込んでみようという試みです。
結論としては「問われていないことを勝手に求める」という動作が重要であるという事です。
詳しく解説してきます。
前半では、旅人算の問題を解く際にどういった計算が必要になるのかを簡単に紹介します。
後半では、そうした動作が出来るようになるための具体的トレーニングを紹介します。
お時間の無い方は、後半だけでも是非お読みください
目次
旅人算を解く際にやっている事
旅人算の応用問題を苦手としている子は、いったい何を苦手としているのでしょうか?
基本問題は解けるはずなのに、長い文章題になると解けなくなってしまう。
図を書くことはできるし、途中までは何か計算することはできるのだが、最後の答えまでたどり着かない。
そんな子を対象として書いていきます。
まず、つまずいてしまうポイントがどこなのかを探るために、例題を一つ紹介します。
例題
ある池の周りを一周するのに、太郎君は20分、次郎君は30分かかります。次郎君がP地点を出発してから5分後に太郎君がP地点から反対の方向に出発しました。二人が初めて出会うのは太郎君が出発してから何分後ですか。
さて、この問題の問いは「二人が初めて出会うのはいつですか?」となります。
しかし、「二人はいつ出会うんだ……?」と考えていても永久に答えは出ません。
その前段階として求めておかなくてはいけないものがあります。
太郎と次郎の速さの比が3:2であることです。(もっと言えば、池一周の距離を”60”と置くことも有効です)
さて、太郎と次郎の速さの比を求めろとは問題文に一言も書いてません。しかし求めなければ問いに答える事も出来ません。
算数が得意でこの問題を難なく解く子は、言われなくても太郎と次郎の速さの比を求めます。
一方で苦手な子は速さの比を求めようという発想が持てない子がいます。
例えば家庭教師が「二人の速さの比を求めてごらん?」とヒントを出せばすっと解けます。
しかしテストで一人になると解けなくなります。
求めようという発想が持てないからです。
こういう子に「速さの比を求めてみよう」とヒントを出すことは練習にならないので指導として有効ではありません。
速さでは問題で問われていないことを自発的に求めることが大切です。
算数が苦手な子が自発的に、問われていないことを求められるようにするためにはどうしたら良いのでしょうか?
センス?いえいえ、そんなものには頼りません。
具体的なトレーニングで解決していきましょう。
「問われていないことを勝手に求める」というトレーニング
具体的方法:問いの存在しない問題を解かせる
速さの基本は理解しているのにテストの問題が解けない子への練習として有効だと考えているのが「問いの存在しない問題を解かせる」という練習です。
どんなものなのか具体例を示します。
例題
A地点からB地点まで行くのに、太郎君は20分、次郎君は30分かかります。さて~
ここで終わりです。
本来の問題文の前半部分だけが見えている感じです。
コーヒーか何かがこぼれて、文字が読めなくなったと考えてください。
さて、これだけの情報から何かを答えなくてはならないとしたら、みなさんなら何を答えるでしょうか?
この書き出しから始まる問題文で、もっともありそうな設問は何でしょうか?
そう考えると、自然と「太郎と次郎の速さの比が聞かれるのでは?」と予想し「3:2」と答えると思います。
これをもっと高度にしていきます。
例題
太郎と次郎の速さの比は3:2です。二人が同時にA地点を出発してB地点に向かうと、太郎の方が5分早く到着します。さて~
これだったらどうでしょうか?
ある程度受験算数に慣れている生徒であれば、これも少し考えれば分かると思います。
「太郎がBまで行くのにかかる時間か、次郎がBまで行くのにかかる時間のどっちかが聞かれるのでは?」という予想が立ちます。
問題文には何も問いがありませんが、問われそうなことを自分で予想して、勝手に答えることができました。
これが大切な練習です。
目的
このトレーニングの目的は二つあります。
目的①問われていないことを求めるクセを付ける
既に説明したように、速さの問題では問われていないことを勝手に求め、それを基に更に考えを進めていくような手順を用います。
問われていないことを勝手に求めるという動作だけを抜き出してトレーニングすることで、心理的な意識付けを行います。
目的②おきまりの状況・文章の書き方への反応速度を上げる
受験算数の文章題には、定型文ともいうべき問題文の書き方や状況設定があります。
「AがBより5分早く到着した」のようなものもその一例です。
これはある程度慣れた受験生であれば「到着時刻の差なんて、時間の比の差と関連付けて使うパターンがほとんどなのでは?」くらいに思えるものです。
「家から学校まで5分かかりました」であれば利用方法は様々考えられますが「到着時刻の差が5分でした」では情報の利用用途はかなり限られます。
そんな風な反応速度を上げる練習になります。
お決まりのフレーズは「あぁ、またあれね。どうせあんな感じでしょ?」と思えるくらいにまで練習しておきたいです。
まとめ
算数の上達のためには出来ない原因の細分化と明確な言語化が必須です。
「センス」や「注意力」のような曖昧な言葉で苦手の原因をごまかしていては上達は望めません。
原因を正確に特定し、対策を考える。
その対策は出来るだけ具体的な取り組みで、自然と新しい考え方を身に付けられるような仕掛けがあると良いです。
生徒一人一人の状況に合わせて対策を考えてあげられるのが家庭教師の強みですね。
以上です。是非お役立てください。