11/15(日)に志望校診断SAPIXオープンが実施されました。
その中から1問解説したいと思います。
図形と規則の問題をテーマとします。
まず一般的な解法をさらっと解説し、次いでこの問題を解くために真に必要だった能力は何だろうか?という視点で記事を書いていきます。
問題
下の図のように、直線を組み合わせて正方形を積み上げていきます。例えば2段の場合は10本の直線で出来ています。
(1)5段まで積む場合に必要な線は何本でしょうか
(2)300本以下の線で作るとき、最大で何段まで積むことが出来るでしょうか?
解説
細部の表現は違うと思いますが、私の記憶が正しければ大体こんな感じの問題だったと思います。
さて、一見してこの問題は図形に関係する規則性の問題ですね。
段が増えていくごとに、線の本数も規則的に増えていくことが予想されます。
多くの受験生が下の画像のように線の本数を数えたことと思います。
ここまでは多くの受験生がやったと思います。
この先に、2つの関門が待ち受けています。「規則の発見」と「書き出しの判断」です。
まずは普通に解き方を解説します。
その後で、なぜこの問題を難しく感じてしまう子がいるのかを解説します。
とりあえず次の4段まで書いてみると、線が28本なことが分かりました。
+8、+10ときましたので、次は+12かな?と予想できます。 念のためもう一つ、5段まで書いてみましょう。
5段まで書くと予想通り+12になっており、40本でした。
これで(1)の答えは出せました。書き出した結果、40本です。
次に(2)です。
300本の直線で出来るのは最大で何段? という問題です。
言葉は覚えなくて大丈夫ですが、この数列は「階差数列」と呼ばれるものです。増える数が2ずつ増えています。
例えば5段の時の直線の本数を求めるには、初項の10から始めて
10+(8+10+12)=40となっています。最初の10に、8から始まる等差数列の和を足します。
さぁ、300本以下の場合を計算……めんどくさい!!!
そうなんです。果てしなく面倒です。こんなことやってられません。もう書き出してしまいましょう。規則は分かっています。
8,18,28,40,54,70,88,108,130,154,180,208,238,270より、14個目で300本以下の限界に達しました。
最初が2段ですので、14個目は15段。答えは15段です。
さて解説はここまでです。この次の項目からが算田の伝えたいことの本番です
どこが難しいのか?
規則の発見という意識
6年生の受験生が今規則性の問題で盲点になりやすい意識は「規則の発見」という意識です。
基本的な規則性の問題では、規則が何かは問題文で明らかになっている場合が多いです。例えば次の問題
問題:1,2,3,2,3,4,3,4,5,4,5,6
上の数列の50番目の数は何でしょう。
こんな感じです。規則自体は簡単です。1,2,3/2,3,4/3,4,5……と3つずつのグループになっています。
規則を利用して計算できるかどうかは別問題として、規則が何なのか自体はすぐに発見できます。
これが基本問題です。
上位校の入試問題に出るような規則性の問題は、もう一段階前の作業を要求します。
つまり、問題文を一読しただけでは規則が明らかにならないのです。
一読しただけでは分からない規則を、自分でいくつか書き出すことで発見するという作業が必要になります。
今回のサピックスオープンの問題であれば、5段くらいまで書き出すことで、階差数列であることを発見することが求められています。
そして、この作業にはまだあまり慣れていない子が多い印象です。
規則が分かっている数列の問題は解けるけど図形の規則が解けないという子は、この「規則の発見」の段階が弱い可能性があります。
そうした子には「書かないと規則は見つけられない!」ということを教えてあげることが有効です。単純なことのようですが、ここの意識が抜けている受験生は多い印象です。
書き出した際の作業量の見積もり
規則性で身に着けてほしい感覚の一つが「書き出した際の作業量の見積もり」です。
つまり、書き出したとしたらどのくらい大変か?という予想です。
書き出したとしても大したことない量なのであれば書いた方が良いですし、書き出しきれない量なのであれば計算で求める方法を模索するべきです。
規則性の問題というのは、時間が無限にあれば大体の問題は解けます。ひたすら1000でも2000でも書いていけば答えは出せます。
解法選択として書き出すか計算するかは、その大変さによって左右されます。
目安として、書き出す量が30以下なら迷わず書き出せと私の生徒には伝えています。
書き出す量が50くらいになると悩ましいですが、もし50個数字を書き出して答えが求まるなら、最終手段として書き出すのもアリだと思います。
さて今回のSAPIXオープンの問題「直線の数が300以下」はどうでしょうか。考えていきます。
最初の2段の図形が10本です。次が+8で、増える数が2ずつ増えていきます。
もし仮に10ずつ増える等差数列だとしても、10から300までは30個くらい書けば解決します。
まして今回は後ろに行けば行くほど増える数が増えていく階差数列ですので、必要な書き出し数はさらに減ります。精々20くらいではないか?という予想を受験生にもしてほしいのです。
実際書き出してみると14個で解決します。
クレバーな解決方法というか、書き出して解決するならば書いてしまった方が良いです。
SAPIXの問題を作った担当者も、問題を「300本」に設定しているということは、書き出しで解くことを想定して作問していると思います。
もし絶対に計算で求めて欲しいという意図ならば数を3000とかにするはずです。
(男子超難関校の受験生であれば規則を一般化して問題が3000本でも解けるように練習しますが、それはまた別のお話で)
この時期の6年生に身につけて欲しい能力の一つとして、書き出しの作業量の見積もりと、書き出す判断力だというサピからのメッセージではないか? と算田は勝手に予想しています。(深読みしすぎかも!?)
まとめ
この問題は、時間が限られているサピックスオープンの試験中に、書き出す判断力が試されている問題だったのではないかと思っています。
問題を見た際の初期動作。まず何をするべきなのか? 書き出すかどうかの判断はどのようにすればいいのか? のようなことも、目立たないですが鍛えてあげた方が良い能力です。
正しい解き方を教えること以外にも算数講師のやるべきことは多く、面白い仕事です。
ご家庭で指導される際の参考にしてみてください。