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指導法

既存の知識を引っ張ってくる力とは?

今回はマニアックな指導論についての記事になります。
受験勉強の後半、6年生の後期に必要になる「既存の知識を引っ張ってくる力」についてです。

こんな話を聞いたことは無いでしょうか。
難関校の入試問題と言えども、ほとんどは基本問題で学んだ知識の組み合わせで出来ている。

「基本問題をしっかりやっておけば応用問題も解けるようになる」
聞いたことありますよね。そして、こう思ったはずです。

そんな理想通りに行ったら苦労しないんだよ!!

思いますよね。分かります。
でも、応用問題が基本問題の組み合わせで出来ているというのは本当です。
かといって、基本問題を解いただけで応用問題が自動的に解けるようになるわけではありません。

今回は、基本問題と応用問題の間にある「見えない壁」について、その輪郭を暴いてやろうという趣旨の記事になります。

前半では 応用問題を解けるようになるためには、何をしたいのか。
後半では そのために、基本問題を学習する段階である5年生で何に気を付けて指導するべきか。

こんな内容で進めていきます。
感覚的でマニアックな話になりますので、良く分からんという方は飛ばしてください。

何をしたいのか?

新規知識のインプットと既存知識を引き出す力

算数の勉強は大きく二つに分類できると思っています。
新規の知識をインプットする勉強と、既存の知識を引き出す力です。

インプットの方は想像しやすいでしょう。新しい考え方・解法などを学ぶ勉強です。
現在の中学受験は範囲が膨大になっていますので、6年生の夏頃までは基本的に知識のインプットという側面が強いです。
特に5年生の終わりまではどの塾でもインプットメインのカリキュラム内容になっています。

それが一転、6年生の後半あたりから変化します。
「既存の知識を引き出す力」が重要になるのです

「5年生までに全単元を一通り勉強する」の謎

皆さまは疑問に思ったことは無いでしょうか。
大手の塾(サピックスや早稲アカ、四谷など)は、5年年生の終わりまでに一通りの全単元を学習し終わることになっています。

「え、じゃあ6年生では何を勉強するの?復習?」

そう思われるのも無理はありません。
ここの謎が「引き出す力」と関わってきます。

何をしたらいいのか

直前期の家庭教師は何を指導しているのか?

6年終盤になったなら、知識を入れることで解決するのではなく、過去の知識を引き出すことで解決するようになります。
生徒が解けなくて困っている問題の解法を新たに伝えるのではなく、その子の中に既にある知識・解法を引っ張り出す手伝いをするようなイメージです。

このタイミングで指導方法、解説スタイルが変わります。
一般に家庭教師と言うと、ひたすら問題の解説をして解き方を教えているように思われるかもしれません。

外から見ていると同じように見えるかもしれませんが、受験勉強終盤の6年生への指導は異なります。
冬以降は新たな知識を伝えることは減り、既に学習した内容を素早く適切に頭の中の保管庫から取り出してくる練習をサポートしています。

ここを勘違いしたまま、最後まで解説型の授業をしてしまう指導者もいるようですが……
(受験勉強への参入が遅かった生徒や、算数が超苦手なところからの逆転を目指しているケースは異なります。これらの場合は、直前まで足りない知識を入れていく事もあり得ます)

基礎を学ぶ時から応用を見据えて指導する

特徴的な解法や考え方、頭の使い方や頻出の状況には特徴的な名前を付けておきます。
一連の動きを「ワザ」としてまとめ、覚えやすく思い出しやすくしておくのです。

これはふざけて言っているわけではなく、物事を認識するためには名前が必要です。
例えば「シャンプーのボトルを空けて、詰め替えパックの封を切ってその中身を空ボトルに入れて、最後に空ボトルのフタを締めておいて欲しい」時に、逐一全部指示したりはしませんよね。
「シャンプーの詰め替えしといて」と言えば理解してくれます。

これは「詰め替える」という名前で一連の動作に名前がついているからです。
依頼する側と依頼される側が「詰め替える」という動作について共通認識となっているので、スムーズに一言で伝達できています。

算数の指導についても同様のことが言えます。
いくつかの特徴的な動作や解法、数字の操作に名前を付けて認識させることで、受験最終版の指導においてじわじわ効果が表れます。

単独であれば大したことない壁でも、長大な応用問題の途中で出てくると解けなくなる原因になります。
そんな時に「そこは『シャンプーの詰め替え』を使うんだよ」「あぁ、そうか!」となれば、その一連の動作は一言のワザ名で認識されます。
ここで「空のボトルを空けて封を切った薬剤をボトルに入れて、その後フタを閉めて……」なんて解説していたら理解できるものも出来なくなります。
覚えなければならない量が減ります。

人間の暗記力には限界があるので、うまく圧縮して覚える必要があります。
どこをどう圧縮すれば受験最終版の追い込みで有利になるのか。

ここは、教科を知り尽くしたプロの出番です。
有効であろう「ワザ」に名前を付けて、5年生や6年生の前半から脳に刷り込んでおくのです。

まとめ:解法暗記に濃淡をつける

算数の解法を全て暗記するのは不可能です。
ワザとして名前を付けてパッケージングするべき領域と、その場で臨機応変に考えるべきものがあります。

どこを覚えるべきか、どこは覚えなくても良いのかの判断をすること。
どのような形で覚えたら後々使いやすい形になるか。

この辺りの判断をするのがプロ家庭教師に求められるものではないかと思います。
問題の解説をするだけならある程度のレベルがあれば誰でもできます。

家庭教師はそんなことを考えながら授業をしているんだよ! という裏側についての記事でした。
参考になれば幸いです。

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