突然ですが、こんなイメージを持っている方はいらっしゃいませんでしょうか。
・かけ算すると数は大きくなる
・割り算すると数は小さくなる
ドキッとした方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回の記事では、
小学5年生頃までの生徒の間に広まっているこの誤解について解説していきます。
そして、この誤解が割合単元を学ぶ上での見えない、しかし大きな障壁となる事についても触れていきます。
目次
「かけ算すると数は大きくなる。割り算すると小さくなる」が成り立つのは1より大きい場合だけ!
見出しにもある通り、「かけ算すると数は大きくなる。割り算すると小さくなる」という一般的なイメージは、割る数が1より大きい場合にのみ成り立つ事です。
例えば
10×5=50 →大きくなる
10÷5=2 →小さくなる
ここまでは問題ありませんが、1より小さい小数になると
10×0.5=5 →小さくなる
10÷0.5=20 →大きくなる
また更に分数では
10×1/5=2 →小さくなる
10/1/5=50 →大きくなる
このように、1より小さい分数・少数の場合には、掛け算すると数は小さくなり、割り算すると数は大きくなります。
そのため、割合の単元に入った際にはこの誤った常識を崩すところから始めないといけません。
では、なぜこの誤った常識があると割合の学習で障害となるのでしょうか?
割るのかかけるのか分からなくなる
問題:クラスの人数は40人です。今日はクラスの人数の1/4が欠席しました、欠席者は何人でしょうか?
この問題の答えを出す際に、40×1/4なのか40÷1/4なのか分からなくなることがあります。
また、このくらい簡単な数字ならば分かったとしても
問題:水筒に水が630ml入っています。このうち7/9を飲みました。何mlの水を飲みましたか?
こうなった際に、かけ算か割り算か分からなくなるケースは良くあります。
上記の問題の答えはそれぞれ
40×1/4=10人
と
630×7/9=490ml ですが、それぞれ割り算の式を立ててしまう子がいます。
その原因が、冒頭の「かけ算すると数は大きくなる。割り算すると数は小さくなる」という誤った意識を持っていることに起因している場合があります!
数が小さくなることは感覚で分かっている
算数が苦手な子とはいえ、「飲んだ水は630mlよりも少ない」という事は生活感覚として分かっています。
また「630と7/9を使って何か計算する」という事も多くの場合分かっています。
そして「630と7/9だから、この問題はかけ算でも割り算でも両方割り切れる……」とひとしきり絶望した後に、エイヤ!とかけ算か割り算の二択に賭けて答えを書く。
と言うのが割合の苦手な子の一般的な行動です。
この際に、「答えは小さくなるはずだから、割り算では?」という発想で割り算の式を立ててしまう子が居るように思います。
繰り返しになりますが、この原因は「数を小さくするには割り算」という誤ったイメージです。
正しい考え方を教えても、間違った考え方が取り除けていないと出来るようにならない
割合についての正しい考え方・指導法は世の中にたくさんあります。
割合の定義(部分/全体)からの説明や、「単位量を求める」という割り算の考え方など、どれも大切な考え方です。
しかし、子供の頭の中に間違ったイメージが根強く残ってしまっていると、いくら正しい考え方を指導したとしても、古いイメージに引っ張られてしまいます。
そればかりか、染みついている間違った考え方と矛盾することを新たに指導されますので、拒否反応を起こしてしまうような事も見られます。
「いままで思っていたことと違うことを教えられている。嫌だ!」と過去の考え方を守る方に行きがちです。
そんな時には、真正面から一度、間違った考え方を否定してあげる必要があります。
「もしかしたらこんなイメージを持っているかもしれない。だけど、これは間違っています!今日限りで捨てましょう!」という手続きを踏んであげることが重要です。
ここで難しいのは、生徒が持っている「誤ったイメージ・考え方」を講師側が読み取れるかどうかです。これは非常に難しい。
講師は一般的に「出来る人」なので、出来ない人がどう考えているのかを読み取れるかどうかには、向き不向きがあります。
自分よりも大きく出来の悪い生徒の指導が苦手だという先生は、ここが苦手なことが多いのではないかと思っています。
小学生を指導する際には、正しいことを伝えるだけではうまくいきません。
生徒が持っている「誤った考え」を敏感に読み取って、それがどうして間違っているのかを丁寧に説明してあげることが有効です。
高校生くらいになれば生徒との会話の中で明らかになったりしますが、小学生はまだ言語化が苦手です。指導者側が読み取ってあげる必要があります。
これが出来る講師は限られており、算田はここが得意なのでこの仕事をやっています。
結論をもう一度書いておきます。
正しいことを伝えるだけでは出来るようにならない。子供の頭の中にある間違った考えを読み取って、それを否定してあげることが時には必要。
以上です! ご参考になれば幸いです。