計算で求めるタイプの場合の数で戸惑うことが多いのは「これは割るの?割らないの?」です。
場合の数の問題は一見同じような問題に見えても全く意味合いが変わります。
こっちの問題は割らないのにこっちの問題は割る。なんで??? となってしまいます。
場合の数は、問題ごとに関連性を見つけて分類することが難しい単元です。
場合の数問題をどのように分類するかは、指導者の中でも決定版と言えるような指導法が確立されていないように感じています。
というのも、全ての問題を整然と分類するための切り口を見つけるのが難しいのです。
どうしても例外が出てしまう……
日々実際に生徒を指導する中で、有効だと思える分類をご紹介します。
場合の数で悩むお子様の多い「割るの?割らないの?」問題と密接にかかわる「区別する・しない」問題です。
区別する場合には割らず、区別しない場合(同じとみなす場合)には割るのですが、その区別する・しないはどんな時に発生するのか?
というテーマです。
(ブログ上の文章だけでどこまで伝えられるか不安ですが……可能な限り書きます!)
区別する・しないが発生する場面を以下の4つに分類しました。
個性で区別する
モノに個性があるかないかで、区別する・しないが変化します。
例えば次のような問題
(1)5個のリンゴがあります。この中からいくつかのリンゴを買います。リンゴの買い方は何通りありますか?ただし最低1個は買うものとします。
(2)A~Eの5人の生徒がいます。この中から何人かの代表を選びます。選び方は何通りありますか?ただし最低1名は代表を選ぶものとします。
さて答えです。(1)は、リンゴを何個買うかなので、1個か2個か3個か4個か5個で答えは5通りです。
難しく考えることもありませんでしたね。単純な問題です。
(2)の方は、リンゴではなく人間ですので、それぞれに個性があります。
本当はリンゴだって、それぞれ大きさが違ったり色合いが微妙に違ったりと個性があるはずなのですが、算数の問題ではそれは気にしないお約束になっています。
リンゴは全部区別がつかないもの。人間は個性があるから区別がつく。です。
置き場所で区別する・しない
物を置く場所に区別があるかないかです。
(1)A~Fの6人から3人を選ぶ選び方は何通りですか?
→6×5×4/3×2×1=20通り
(2)A~Fの6人から3人を選んで1列に並べます。何通りですか?
→6×5×4=120通り
上の2問は、A~Fという、6つの区別できるものから3つを選ぶところまでは同じです。
しかし、選んだものを区別のある場所に置くのか、区別がない状態にしたまま(選ぶだけ)なのかという違いがあります。
置く場所の区別ある・なしによって答えが変化します。
他にも、例えば
(1)黒石3個、白石3個から3個を選ぶ選び方は何通りですか?
→(黒石,白石)の順に表記すると、(3,0)(2,1)(1,2)(0,3)で3通り
(2)黒石3個、白石3個から3個を取り出して1列に並べます。何通りですか?
→
(3,0)の場合……1通り
(2,1)の場合……白石がどこにあるか?で3通り
(1,2)の場合……黒石がどこにあるか?で3通り
(0,3)の場合……1通り
1+3+3+1=8通り
【別解】
1番目の石を何色にするか?……2通り
2番目の石を何色にするか?……2通り
3番目の石を何色にするか?……2通り
2×2×2=8通り
のように、順番を決めないのか、順番を決めておくのかによって問題の趣旨が変化します。
グループの名前で区別する・しない
グループに付けられた名前によって区別する・しないが変わるケースです。
(1)A~Fの6人を桜組(2人)、楓組(2人)、椿組(2人)の2人の3つのグループに分けます。分け方は何通りですか?
(2)A~Fの6人を2人,2人,2人の3グループに分けます。分け方は何通りですか?
この2問の答えが異なると言ったら、驚かれる方もいらっしゃるでしょうか?
ポイントは、(1)はグループに名前がついていることです。
(1) の答えは(6×5/2×1)×(4×3/2×1)×(2×1/2×1)=90通り
(2)の答えは、(1)の答えである90通りから更に÷6をします。 90÷(3×2×1)=15通り
です。
(1)の場合は
桜組A,B 楓組C,D 椿組E,F の場合と
桜組A,B 楓組E,F 椿組C,D の場合は別としてカウントします。(C,Dが椿組なのか楓組なのかという違いがあります)
しかし一方で
(2)のようにグループ名が付いていない場合は
A,BとC,DとE,Fに分けた場合と
A,BとE,FとC,Dに分けた場合は、同じことですよね。どちらも見分けはつきません。
どちらも「あーA,BとC,DとE,F に分けられてるなー」としか認識できません。
同じことは、玉を入れる袋の色分けや袋の大小による区別の場合にも発生します。
グループ名による区別の有無、という視点もひとつ覚えておきましょう。
図形的に区別する・しない
最後は図形的な区別です。
例えばA~Eの5人を円形に並べる場合(回転して同じものは同じとみなす。円順列)や、A~Eの5つの玉を使ってブレスレットを作る。(回転したり裏返して同じものは同じとみなす。数珠順列)などです。
回転したり裏返して同じものを同じとするかどうか、という視点はよく出題されます。
図形的な区別はこれだけで大きなテーマにできるくらい様々なパターンがありますので、今回は深入りしないことにします。
「回転と裏返し」という視点だけでも持って置ければOKです。
まとめ
場合の数を学習する際に役立ちそうな分類方法・切り口をご紹介しました。
実際に生徒に授業する際には子供向けのアプローチになりますが、その裏で指導者はこんなことを考えているんだよという紹介としてとらえていただければと思います!