約数と倍数の単元にで頻出の「~で割ると〇余り、~で割ると〇余る」系の問題を3パターンに分けて解き方を解説します。
例えばこんな問題です。
「4で割ると2あまり、6で割ると3余る整数を小さい方から3つ書きなさい」
この手の問題には大きく分けて3パターンあります。余り共通、足りない共通、何も共通ではない、です。
3つめのパターンが最も難しくなっており、その解き方の指針は
気合と根性&計算 です。
気合と根性です! 具体的には書き出しです!
とはいえ、全てを書き出すわけではありません。ある程度までは気合で書き出しますが、その後は計算で求めます。
今回の記事は前半と後半に分かれています。
前半では、こうした問題の解き方を解説するとともに、どの方法を使ったらよいかの見分け方も解説していきます。
後半では、この手の問題に限らず、算数を学習する際に大切なポイントをお話します。
算数が得意ではない読者の方は、前半はサーっと読み飛ばして、後半から読んでいただいても楽しく読めると思います。
第一部:解き方
パターン0
4で割っても6で割っても割り切れる整数を小さい方から3つ書きなさい
まずは最も簡単な基本形です。余りが出ずに割り切れるパターンです。
これは単に公倍数を求めればよいので、答えは12,24,36となります。
ここが出発点です。
パターン1 余り共通型
4で割っても6で割っても2余る整数を小さい方から4つ書きなさい
これが二つ目のパターンです。
余りが共通しているパターンです。
さて、こんな都合の良い数をどうやって探そうかと悩みますね。
まず最初に思いつく解決方法は書き出しです。とにかく原始的に書き出します。
4で割ると2余る数:2,6,10,14,18,22,26,30,34,38……
6で割ると2余る数:2,8,14,20,26,32,38……
とこのように書き出せば、答えは2,14,26,38であることが分かります。
さて、これをどのように計算で考えましょうか。
ポイントは「4で割っても2余るし、6で割っても2余る」という言葉から「12の倍数に2を足せば良いのでは?」と読み替える事です。
言い換えると、4と6の公倍数に2を足せばよいのです。
例えば12は4で割っても6で割っても割り切れます。この数に2を足せば、4と6のどちらで割っても2余る状況になります。
とすれば、求めるものは「4と6の公倍数である12の倍数に2を足した数」です。
0+2=2
12+2=14
24+2=26
36+2=38
のように計算で求めることが出来ました。
これがパターン1です。
パターン2 足りない共通型
4で割ると3あまり、6で割ると5余る整数を小さい方から3つ書きなさい
これがパターン2です。
余りが同じではなくなりました。
「4で割ると3余る」は、言い換えると「4で割ると1足りない」とも言えますよね。
3余るという事は、あと1あれば割り切れたという事です。
「6で割ると5余る」も「6で割ると1足りない」と言い換えられます。
そうです!この問題は余りは共通ではありませんでしたが、「足りない共通」という特徴があったのです!
ここからはパターン1と同じ考え方で行けます。
4と6の公倍数である、12の倍数から1引けば、4と6のどちらで割っても1足りない数にすることが出来ます。
つまり
12-1=11
24-1=23
36-1=35
ということで答えは11,23,35です。
念のため書き出しで実験して、答えが正しいことを確認しておきます。
4で割ると3余る数:3,7,11,15,19,23,27,31,35……
6で割ると5余る数:5,11,17,23,29,35……
パターン3 どちらも共通ではない型
4で割ると1あまり、6で割ると5余る整数を小さい方から3つ書きなさい
さぁこれが最終パターンです。
ここまでは「余り共通」や「足りない共通」のように共通のものがありましたが、今回はどうでしょうか。
まず余りは異なっていますね。
では足りないは……
祈りながら確認しますが、残念ながら同じではありません。
このパターンは余りも共通も同じではない、てんでバラバラの場合です。
この場合は覚悟を決めるしかありません。
そうです。気合と根性で書き出すしかないのです。
安心してください。書き出すといっても全て書き出しではありません。具体的には
1個目を見つけるまでは気合(書き出し)で、2個目以降は計算(最小公倍数)で
という流れです。
では解いていきましょう。
まず最初の1個を見つけるまでは気合で書き出しです。
ここは上品な計算方法などありません。同じ数字が出てくるまでただ無心で書き続けます! 気合と根性!ファイト!
4で割ると1余る数:1,5,9,13,17……
6で割ると5余る数:5,11,17……
あった!!見つけました。最初の1個は17です。
この1個さえ見つけてしまえば、もう気合パートは終了です。 ここからはスマートに計算で求めていきます。
(もちろんこのまま気合で書き続けても答えは求められますよ)
さて、1個目は17でしたが2個目は何だろうか? と考えます。
上の段には、17から4の倍数だけ増えた数が書かれ、下の段には6の倍数だけ増えた数が書かれ続けます。
という事は、4と6の最小公倍数である12足した数が次に共通するのでは!? という事で、17+12=29が二つ目です。
(この辺りは実際の授業の際はもう少し丁寧にやりますが、今回はこの辺で割愛)
一応書き出しで実験します。
4で割ると1余る数:1,5,9,13,17,21,25,29……
6で割ると5余る数:5,11,17,23,29……
さぁここまでくれば規則が分かってきます。12ずつ増えていきます。
よって3個目は29+12=41です。よって答えは 17,29,41です。
第二部:勉強方法
第二部では「~で割ると〇余る」型の問題を題材に、算数学習で大切なポイントをいくつか紹介します。
ある程度のパターン認識は必要
算田がこの手の問題を指導する際には「3つのパターンがある。余り共通型、足りない共通型、何も共通ではない型」のように分類して指導しています。
これはパターン暗記と言われるような方法に近いです。
正直なところあまりいい印象がない言葉ですよね。パターン暗記。
それでもある程度まではパターンの認識が必要だと思うのです。
例えるなら「ネジがあったらドライバー。釘があったらトンカチ」くらいのパターン暗記は必要だと思うのです。
「ネジ穴の形を見れば、暗記せずともドライバーを使うことは考えればわかるはずだ!」というのは理屈としては正しいのですが、現実的ではありませんよね。
算数においてもある程度のパターン化は必要です。
しかし多くの小学生が戸惑っているのは「銀色でとがった部品があるときに、ドライバーを使うときとトンカチを使うときがある。何が違うの?」というような疑問です。
解法の使い分けの基準が曖昧になっているのです。
多くの集団塾の解説では「ここではドライバーを使いますよ! で、こっちはトンカチ!」というような場当たり的な解説しかなされないので「なんか素材が金属の時はドライバーで、木材の時はトンカチなのかな?」のような間違ったパターン化をしてしまう子が発生します。
そして、テストで木材をネジで留めるような初見の問題が出た際に、木材だからとトンカチを使って失敗します。
正しいパターン化や見分け方を指導することが重要です。
ネジと釘の正しい見分け方を指導して、それに合わせた工具を使えるように練習します。
とはいえ解法暗記では太刀打ちできない
パターン認識が必要だと説明しましたが、かといって解法の完全暗記では太刀打ちできません。
例えるなら「品番c-360にはドライバーを使う。c-361もドライバー。でもd-190はトンカチ」のような覚え方を目指すことは無理があります。
どこまでの解像度で問題群を分割・分類するのかによって学習効率は大きく異なります。
算田が意識的に行っている指導は「銀色でとがった部品があった時の見分け方。下にらせんのミゾがあったらネジ。上に+か-の溝があったらネジ。どちらもなければ釘の可能性が高い。」のような見分け方の指導が一つ。
もうひとつは「ネジだったら大体左に回すと締まる。特殊なネジは違うときもあるから、もしダメだったら右に回してみる」のような初期動作の方針をザックリ伝えることです。
家庭学習の際に
算数の得意なお父様・お母様が指導される際に「この問題はこうやると解けるよ」までは指導できる場合が多いのですが「どうやってその解法を使うと見分けるのか」までの説明はなかなか難しいと思います。
その単元に存在する典型問題の全体像が見えていないとうまく指導できないからです。
ご自身がその問題を解く際に「お、この問題はこうやって解けば解けるな!」と判断したきっかけや根拠を言語化してお子様に伝えてみると、一段質の変わった指導が出来ると思います。
もしよかったら真似してみてください!