「狂った時計」というジャンルの問題があります。
この問題で、一部の生徒(早稲アカ生に多い)が、おすすめできない図を使って考えていることがありますので記事にしてみました。
後半では算田おすすめの方法も紹介します。
「狂った時計」は入試でたまに出るジャンルですが、頻出とは言えないくらいの出現頻度の問題です。
あまり出ないような問題は、出来るだけ暗記量を少なく、シンプルな解法で乗り切りたいです。
仮にベストで素晴らしい解法があったとしても、めったに見かけない問題のために複雑な解法を暗記するのはナンセンスです。
狂った時計とは、例えば次のような問題です。
問題
正しい時計が午前10時を示している時、狂った時計は午前9時57分を指していました。同じ日、正しい時計が午前11時を指している時には、狂った時計は午前11時2分を指していました。
正しい時計と狂った時計が同じ時刻を指していたのは何時何分ですか。
この手の問題を解く際に、下のような図を書いて解いている生徒を散見するようになりました。
この図を習っているのは早稲田アカデミーの生徒に多いような気がします。偶然かもしれませんが、SAPIXや日能研の生徒でこの図を使おうとする子はいませんでした。(算田の生徒という狭い観測範囲ではありますが)
塾によって多少解法に特色が出ますので、こうした図を推奨している先生や校舎があるのかもしれません。
しかし、この解き方には反対します。
理由は、図が何を意味しているのかを理解するのが難しいからです。
正しい時計と狂った時計の時刻の進む速さに差があることを、三角形の相似を利用した図で模式的に表しています。
しかし以前の記事でも書いたように、直感的に何をやっているのか理解できない図は避けるべきだと算田は考えています。
現に私が指導している生徒で、塾でこの図を使った解法を習っていたとしても正しく使いこなせている子は一人もいませんでした。
ではどのような解き方をするのか? 説明していきます。
(説明の文は少し長くなるので、面倒であれば下部の画像だけ見てください)
解説
イメージとしては「速さの比」のような考え方を使います。
正しい時計が10時00分~11時00分で60分進んでいます。その間に、狂った時計は9時57分~11時02分の65分進んでいます。
つまり正しい時計が60分進む間に狂った時計は65分進んでいます。
二つの時計の時刻が進む速さの比は、60:65です。 約分して12:13です。
言い換えると、正しい時計が12分進む間に狂った時計は13分進みます。
ここまで分かれば、あとは速さの追いつき算のように考えれば解決します。
スタート時点で、正しい時計の方が3分先に行っています。
正しい時計が12分進む間に狂った時計は13分進みますので、3分の差を縮めるためには
正しい時計が36分、狂った時計が39分進んだときに時刻が追いつきます。
よって答えは午前10時36分です。
複雑な図は使わずに、速さの追いつき問題のようにして解く方法をご紹介しました。
先に紹介した図も決して間違っている訳ではありません。狂った時計の要素を図形問題に落とし込んでいて華麗な解き方だという点は同意します。
しかしそれでも、この図は悪い図の典型です。
図のどこに数値を対応させるのかが直感的に理解できないので、図を書かなくても解けるくらいの理解度がある人でないと正しく図が描けません。
分かっている人は図を書く必要がないし、分からない人は図が書けないので解けない。
講師が解説の際にデモンストレーション的に魅せるするための、意味のない図だと思っています。
大切なのは、派手さはないけれども堅実で、実際に生徒が一人で使いこなせる解法を教えることです。
算数のプロである講師から見ると美しくエレガントな解き方でも、生徒にとっては使いづらい解き方ということがあります。
出来るだけ単純で、本質的で、汎用性の高い解法をトレーニングしていくことが難関校の問題を解くための近道です。
生徒一人ひとりの得意不得意や目指す学校によって教えるべき解法は少しずつ変わります。
最高の方法にこだわるのではなく、その子にとって最善の方法で教えてあげられるようにしましょう。