今回は分かりやすい説明とは何か?という疑問について、「解説の前提知識」と「論理の段差」という側面から記事にします。
相手の疑問に対してどのように説明すると分かりやすいのでしょうか。
これは相手の持っている前提知識と、理解できる論理の飛躍の大きさによって変わってきます。
まずは例題を出してみます。
一つの質問に対して、解答案を3パターン提示します。
どの説明が一番わかりやすいか考えてみてください。
例題
質問「将来医者になりたいのですが、早稲田実業と慶應普通部のどちらを目指すのが良いでしょうか?」
回答①「医者になりたいなら慶應だね」
回答②「慶應大学には医学部があるけど早稲田大学には医学部がない。医者になりたいなら慶應だね」
回答③「日本で医者になるためには、大学で医学部に行かないといけない。医学部がある大学とない大学がある。医学部がない大学の付属中学に入ったら、医学部に行くためには外部の大学を受験しないといけなくなる。慶應大学には医学部があるけど早稲田大学には医学部がない。医者になりたいなら慶應だね。
どの説明が一番分かりやすかったでしょうか?
読者の皆様が持っている前提知識によって変わると思います。
早稲田大学に医学部がないことをよく知っている方であれば①の説明で十分に通じます。
しかしそのことを知らなければ「医者になりたいなら慶應だね」とだけ言われても、なんで?となります。
背景となる知識を説明している②が分かりやすくなるでしょう。
もしも医者になるためには医学部に行くことが必要だということや、大学によって医学部がある所とない所があるということを知らなければ③まで詳細に説明した方が分かりやすいかもしれません。
しかしこのブログの読者様(中学受験に興味のある保護者or受験指導の同業者)なら、②くらいの説明が一番分かりやすいのではないでしょうか?
③まで詳しく言ってしまうと、冗長で逆に分かりにくく感じるかと思います。
知らない人に向けて説明するなら③まで丁寧にしないと伝わりませんが、分かっている人にとっては当たり前すぎて飽きてしまいます。
塾での説明はどのレベルでなされている?
SAPIXや早稲田アカデミーなど、一般的な塾の授業での解説は②又は①くらいだと思ってください。
塾に通っている生徒の多数が、最も分かりやすいと感じる水準を目安で解説されています。
しかしここで困るのは③の解説を必要としている生徒です。
「慶應大学には医学部があるけど早稲田大学には医学部がない。医者になりたいなら慶應だね」とだけ言われて、なぜこれが理由になるのか理解できない子です。
つまり前提となっている知識が抜けている状態です。
算数に置き換えて例をあげます。
4年生であれば、線分図や面積図など、「数」を「線」や「面積」に置き換える発想の本質が納得できていない子です。
5年生であれば、割合の概念が理解できていない子や、比の基本概念が分かっていない子は、その後の単元の解説が全て理解しにくくなります。
この状態のまま塾で②レベルの解説を聞いても、何を言っているのか分からず、ただボーっと聞いているだけの辛い状況になってしまいます。
目安としては算数の偏差値が43以下ですと、大なり小なり辛い状況になっているかと思います。
どこかで一度、③レベルまで掘り下げて根本の考え方をインプットしてあげる必要があります。
家庭での指導で気を付けること
さて、家庭教師や個別指導、ご家庭で指導する際に気を付けなければならないのはこの点です。
つまり②のように「一般的には理解できるだろうと思われている算数の解説」をしてもお子様が一向に理解できないのなら、何か大きな前提が抜けている可能性が高いです。
それが「医学部がある大学とない大学がある」なのか、「医者になるには医学部に行かないといけない」なのか、それとも……
大人からすると当たり前だと思ってしまう事柄の中に、子供にとっては当たり前ではない事項が隠されています。
算数においてここを見抜いてあげられるのが家庭教師・個別指導の最大の利点です。
どうにもならないとあきらめる前に、ぜひ一度ご相談ください。