算数で苦手な単元はどこ? とたずねれば、かなりの割合で名前が挙がるが場合の数です。
他の単元はそこそこできるけど場合の数だけはサッパリ解けないという子もいるほどです。
場合の数の一番の難しいポイントは、どの解き方を使ったらよいのか混乱しやすいところです。
今回の記事では、解き方が混乱しがちな場合の数の問題を、ある切り口で分類して整理してみます。
場合の数の問題を解いていると「この問題はそっちの解き方だったのか!間違えた!」となること、ありませんか?
場合の数の問題は、文中の微妙な表現によって解法が全く異なってしまいます。
小学生からすると、どの解き方を使ったらよいのか、何が何やら分かりにくく思えてしまいます。
今回の記事では「〇〇を〇〇に配る」というような表現の問題文を、区別できる・できないという軸で4種類に分類していきます。
それぞれのタイプについて代表的な問題とその解法を同時に載せています。
今までこういった分類に基づいて指導している先生や解説書を見たことがありませんが、非常に有効だと思っています。
「この問題はこの解き方なのに、こっちの問題は別の解き方。何が違うの?どうやって見分けるの???」という疑問をお持ちの受験生にピッタリの内容となっていますので、是非ご覧ください。
今回の記事で使う表を下に載せておきます。
縦軸は、配り先に区別があるかないかで分類しています。区別ありが上、なしが下です。
横軸は、配るものに区別があるかないかで分類しています。区別ありが右、なしが左です。
4つに分類し、それぞれの代表的な問題文とその解法を併記しました。
繰り返しになりますが、表の縦軸は「〇〇に△△を配る」という際の〇〇が区別できるものなのか区別のないものなのかによって分類しました。
横軸は「△△を配る」の△△が、区別できるものなのか区別できないものなのかによって分類しています。
詳しくはそれぞれ個別の項目で説明していきます。
目次
分類の仕方
「〇〇に△△を配る」というタイプの問題を扱います。
「〇〇に」が区別できるかできないか
①ものを配っていく配り先が、何らかの方法で区別できる場合です。
「A,B,Cの3人に配ります」や「1組、2組、3組に分けます」や「1列に並べます」というような文章です。
名前が付いていれば当然区別できますし、1列に並べる場合はその順番で区別することが出来ます。
②一方で区別できないものの代表例としては「2つのグループに分けます」「3袋に分けます」「3個を選ぶ組み合わせ」のような表現です。
グループや袋に名前が付いていない場合、例えば「赤玉青玉の袋と緑玉黄玉の袋に分ける」と「緑玉黄玉の袋と赤玉青玉の袋に分ける」では、同じことですよね。
袋は全く同じで見分けがつかないのですから、この2つは同じものとしてカウントします。
「△△を」が区別できるかできないか
①配るモノが区別できる場合です。
「赤、青、黄の3つの玉」や「リンゴ、ミカン、バナナ、ナシの4つの果物」や「A~Eの5人の人」のような場合です。
②配るモノが区別できない場合です。
「3つのリンゴ」のように、リンゴ同士で区別をしない場合です。
余談です。
算数の世界では「リンゴが6個あります」といった場合、そのリンゴは区別しないという暗黙のルールがあります。
リンゴ農家のように専門家であれば「うーん、こっちのリンゴのほうが形がよいけど、こっちのリンゴのほうが発色がいいな」のようにそれぞれの個性を見分けることができるかもしれません。
でも算数の世界では、リンゴは区別しないというお約束になっています。
法律でいうところの特定物債権と種類物債権の違いみたいなものでしょうか?(違うかも。法律家の読者の方がいたらツッコミが入りそう……!)
一方で「6人の子供がいます」という場合には、特に名前が書いていなくてもその子供には個性があって区別があるものとして扱われます。
ややこしいですがここは覚えておきましょう。
さて、リンゴと色付きの玉で例題を出しましょう。
「4つのリンゴをA,Bの2人で分けます。ただし0個の人はなし。」であれば、「A1個 B3個」「A2個 B2個」「A3個 B1個」の3通りしかありません。
「A1個 B3個」の場合に こっちのリンゴは小さいからヤダ!そっちのリンゴの方が色つやが良くておいしそう! のようなことは、算数では考慮しないことになっています。
これが「赤青緑黄の色付きの4つの玉をA,Bの2人で分けます」ですと話が変わってきます。
先ほどは「A1個 B3個」は1通りとして数えていましたが、Aがもらった1個が赤なのか青なのか緑、黄なのかによって4通りに分けられることになります。
このように、配るモノが区別できる場合と区別できない場合では計算方法が違ってきます。
次の段落から具体的な解法を含む分類方法の解説に移ります。細かい計算方法などは場合によっては読み飛ばしていただいても構いません。「ふーんこんな感じで分類してるのかー」ということが何となく分かっていただければ大丈夫です。
区別できるものに区別できるものを配る(「A,B,Cに赤・緑・黄の玉を配る」型)
表の右上に該当する問題です。
区別が出来るものに、区別が出来るものを配ります。
「A,B,Cの3人に配る」という問題設定のため、配られる人には区別があります。
また、配るものは「赤、緑、黄の3つの玉」ですので、これも区別があります。
区別がある人に区別のあるモノを配るのが表の右上の状況です。
こうした問題で最も代表的な問題は「A,B,Cの3人に赤、緑、黄の3つの玉を一人に一個配ります。配り方は何通りですか?」という問題です。
これは 3×2×1=6 で求められます。式を立てるときの気持ちとしては
「赤の玉を誰に配るか→3通り。次に緑の玉を誰に配るか→さっき赤の玉を配った人以外なので2通り。黄の玉は、最後に残った一人に配るしかないので1通り。」なので3×2×1という考え方が分かりやすいと思います。
数学の記号を使って説明するならば 3P3 です。
この問題は「赤、緑、黄の3個の玉を1列に並べます」という問題と同じです。玉を配る先が、人の個性によって区別されている場合と、並べる順番によって区別されている状況は本質的には同じだからです。
一方で「A,B,Cの3人に赤、緑、黄の3つの玉を配ります。3人がもらう玉の個数は何個でもよく、0個の人がいてもよい」という場合には考え方が少し変わります。
「赤の玉を誰に配るか→A,B,Cの誰でもいいので3通り。 緑の玉を誰に配るか→これも、A,B,Cの誰でもいいので3通り。 黄の玉を誰に配るか→これもやはり誰でもいいので3通り。
のように、選択肢が3通りのまま減りません。そのため式は 3×3×3=27通り となります。
区別できないものに区別できないものを配る「リンゴを3袋に分ける」型
表の左下に該当する問題です。
代表的な問題文では「6個のリンゴを3袋に分けます。ただし0個の袋があっても良いものとします。何通りですか」です。
ちなみに、この種類の問題が単体で入試に出ることはほとんどありません!
なぜなら簡単すぎるからです。
ただこの後の説明をする際に前提としたいものなので、念のため解説をしておきます。
問題:6個のリンゴを3つの袋に分けます。袋は3つとも全く同じで区別がつきません。0個の袋があっても良いものとします。分け方は何通りですか。
下のように書き出して答えを求めます。
区別できるものに区別できないものを配る(「A,B,Cに6個のリンゴを配ります」型)
図の左上に該当する分類です。
代表的な問題としては
A,B,Cの3人に6個のリンゴを配ります。配り方は何通りありますか(0個の人がいても良いものとします)
です。人間という区別できるものを対象に、リンゴという区別できないものを配っていきます。
先ほど説明した、左下の問題「区別できないものに区別できないものを配る」とは何が異なるのでしょうか。
たとえば左下の問題では(6,0,0)は1通りとして数えました。
しかし、今回は配る対象が人になり、区別があります。
そのため、Aさんが6個もらった場合と、Bさんが6個もらった場合、Cさんが6個もらった場合はそれぞれ別のものとして数えます。
先ほどは違いましたよね。「こっちのビニール袋に6個入っている場合と、こっちのビニール袋に6個入っている場合は別だろ!」という意見は聞き入れないことになっています。
算数の問題では、ビニール袋マニアのように袋ごとの外観の違いが見分けられる人の存在は想定していません。
この違いにより、解法が微妙に異なります。
区別できないものに区別できるものを配る場合(「赤、青、緑、黄の4つの玉を2つの袋に分けます」型)
図の右下に当たる問題です
問題:赤,青,緑,黄の4つの玉を2つの袋に分けます。ただし袋に名前はついていません。
今度は、配るモノは色で区別できるのですが、配り先は外見が全く同じ袋のため区別ができません。
もちろん、ビニール袋の個々の違いを見分けられるようなマニアではないものとします。
では解いていきましょう。
玉を1個と3個に分ける場合と、2個と2個に分ける場合に場合分けして考えていきます。
まず1個と3個に分ける場合です。
これは、1個しか入っていない袋のその1個を何色にするかを考えればよいので、4通りです。
次に、2個と2個に分ける場合を計算していきます。
先に言っておきますと、こちらは要注意です。
まず、4色の玉から、片方の袋に入れる2個の玉を選ぶ選び方を計算していきましょう。
(まずはよくある間違いから紹介します。)
これがよくある間違いです。皆様はどこが間違っているか分かりますか?
ポイントは、分けている袋に区別がつかないということです。
例えば、片方の袋に赤と青を入れ、もう片方の袋に緑と黄を入れたとします。
また別の例で、片方の袋に緑と黄を入れて、もう片方の袋に赤と青を入れたとします。
この2通りは、同じものとして数えるべきでしょうか。それとも別のものとして数えるべきでしょうか。
ビニール袋マニアでない限りは、同じものとしか認識できませんよね。
そのため、ダブりが発生しています。
同じものを全て2回カウントしているので、更にもう一回÷2をする必要があります。
よって正しい式は
4×3÷2÷2=3 の3通りです。
念のため書き出しておくと【赤青、緑黄】【赤緑、青黄】【赤黄、青緑】の3通りです。
まとめ
場合の数を、配り先と配るモノの2つを区別できる・できないで4つに分類して整理する考え方を紹介しました。
今回紹介した基本問題はほんの一部で、まだ他にも抑えておくべき問題はあります。
「5個の玉から3個を選んで一列に並べる」であったり「白石と黒石がたくさんあります」のような設定もよく見かけます。
問題を網羅することよりも、まずは超基本の問題を区別できる・できないという軸で分類するという発想を学んでもらうことを目的としました。
分類の方法を最初に学んでおくと、その後の学習で初めて見る問題があった際に「これはどの考え方を使うんだろう?」と自分で考えることができるようになります。
暗記していない問題でもその場で解法を思いつくための下地が準備されます。
場合の数の問題は、その問題単体で解説を読めば理解できることが多いです。
しかしそれでも場合の数を苦手とする生徒が多い原因は、どの解法を使えばよいのか分からなくなってしまうからです。
場合の数の学習において、もちろん初期段階は、個々の解法を理解して覚えることが必要です。
しかしその段階をクリアしたら、次は「どの解法を使うのか見分ける段階」に突入します。
そしてこの段階が一番大変です。
見分けるための基準を獲得しないといけません。
そのため指導者としては、その問題単体で解説するのではなく、必ずよく似た文章で全く違う問題と同時に紹介するようにしています。
他の問題との差異に注目することが、場合の数攻略のカギです。
今回は「区別できる・できない」という切り口でお話しました。
記事はここまでです。
場合の数について解説した関連記事のリンクが下のほうにスクロールすると表示されています。そちらも是非読んでみてください。